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入ってきたのは大貴だった。
思わず立ち上がる。
目が合うけど大貴がすぐに逸らすから胸が痛んで、だけど左手の人差し指に絆創膏が貼ってあるのが見えてそんなの吹っ飛んだ。
足早に近付いて、右手で大貴の左手を掴んで持ち上げる。
不安そうな顔で俺を見てくる大貴に、


「傷、深くない?」


心配でたまらなくて聞いた。
しばらく見つめ合っていると、大貴が目に涙をじわじわと浮かべて、
「……なんでそんなに優しいの?出会った時から、ずっと。………俺、もう嘘つけないよ。」
と言った。
ぽろっと涙が溢れる。
「俺、雄也が好き。親友としてじゃなくて、友達としてじゃなくて、雄也が大好きなんだ。」
ぽろぽろ、ぽろぽろ涙が溢れて、
「っ、ごめん、本当の気持ち言うの怖くて、中途半端に気持ち伝えてごまかして!親友でいてくれようとする雄也を裏切って、離れようとして、でも完全に離れるの怖くて友達でいようなんて、俺、最低だよ!!」
大貴が自分を責めた。
「……大貴、もういいから。」
手を離して大貴を抱きしめる。
大貴はがむしゃらに俺に抱きついてきて声を上げて泣いて、
「雄也っ、雄也っ……雄也が好きで、好きで、好きで………親友でいれなくてごめん、キスしたいとか思ってごめん!友達の好きじゃなくて、ごめんっ……!」
好きとごめんと、キスしたいって気持ちをくれた。


恋人なら応えてやれるのに。
だけど、俺は大貴の恋人じゃない。


………でも、なのに、どうしてこんなに愛おしいんだ?

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作者名:すみれ | 作成日時:2024年2月17日 2時

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