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「いい天気だな。」

2人とも大学が午前中まででバイトがない日、桜が8分咲きの近所の公園に大貴を呼び出した。
平日の午後にも関わらずに多くの人たちが散歩したり、俺たちみたいにベンチに座って桜を眺めたりしている。
「だな。なんか小学校の時の遠足思い出すな。雄也がお弁当忘れてさ、俺のおにぎり泣きながら食べてたの。」
隣で桜を見上げながら笑う大貴に、
「忘れろよ、そんなの。……大貴だって、雄也かわいそうって泣いてただろ。」
俺が親指と人差し指でほんの少し大貴の柔らかな頬をつまむ。
昔からの癖がぬけない。
くすぐったそうにしながらも、
「好き、それ。」
大貴が目を閉じた。
風が強く吹いて、大貴の横顔にたくさんの花びらが舞う。


なんか可愛い、なんて思いながら頬から指を離して、
「あのさ、何回か聞いた事あると思うけど、その度にお前、はぐらかすからさ。」
今日こそは知りたいと意気込みながらも、
「俺に言えないわけないだろ?教えろよ、今まで誰に恋してきたんだ?好きになったのは誰?照れくさいから言えないとかは、もう無しな。俺の恋愛、お前は全部知ってるんだから。」
なるべく明るく響くように気を付ける。
大貴がまた目を閉じた。
瞼に花びらが乗る。
手を伸ばしそうになる大貴に、
「じっとして。俺が取る。」
薄い瞼を傷つけないように花びらを取ってやる。


「12の時に、キスした。」


目を閉じたまま、大貴が小さく言った。

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作者名:すみれ | 作成日時:2024年2月17日 2時

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