N (1) ページ21
今、目の前で、生徒じゃなくひとりの人間として俺に気持ちを伝えてくれているのは、綺麗な顔で穏やかに微笑んでる、俺の知っている伊野尾じゃない。
取り乱して、震えて心許なくて。
だけどどうもしてやれない。
有岡の眩しい笑顔を思い出す。
昼間抱きしめた小さな体も。
「伊野尾、ごめん。」
謝るとビクッと伊野尾の体が揺れた。
それから本当にか細い声で、
「…………謝らないで。俺の気持ちに失礼だよ………。」
伊野尾が言った。
俺は思わず微笑んだ。
こんな時なのに、初めて伊野尾を愛おしいと、可愛いと思ってしまって。
どうして？有岡の事が好きなのに。
震える伊野尾の握りしめた手にそっと、そっと指先で触れた。
伊野尾が顔をすぐに上げる。
薄暗い部屋でも、綺麗な伊野尾の白い頬がさっとピンクに色づいたのが分かった。
「…………もう遅いから帰りなさい。」
俺が言うと、頷いて伊野尾が、
「……また、来ます。」
そう言って音楽室から出て行った。
どうして手に触れたのか。
考えてもいつまでも分かりそうになかった。
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すみれ(プロフ) - zさん» ありがとうございます！自分なりに一生懸命描けたらと迷いながらも必死なので、zさんの私の描写力が好きだという優しいお言葉、本当に感謝です…。続きも精一杯描きますので読んで頂けたらとても嬉しいです。コメント本当にありがとうございました！ (12月14日 22時) (
レス) @page27 id: c9c573acb4 (このIDを非表示/違反報告)
z(プロフ) - いつも楽しく拝読してます。学生らしく気持ちが揺れてる皆が可愛いし、他作品での大人なTくんの描写が印象的で特に好きだったので、こんなにかわいい学生の表現もなされるんだなぁと思いました。すみれさんの描写力がとっても好きです。更新ゆっくりお待ちしてます！ (12月14日 1時) (レス) @page27 id: 9d63553ef9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2023年12月11日 1時
