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「有岡、あのさっ……。」
喋り出した俺に、
「でも、キス、甘くなかったですか？」
ほんの少し涙目になりながら有岡が、でもやっぱり微笑んで聞いてくる。
最後に、これだけはいい思い出であって欲しいって願いを込めるように。
その瞬間、あの頃のように指が有岡に触れたがった。
「甘かったよ。」
でも触れれずに、ひと言俺がそう言うと、
「………でも酷い事だったんですよね？」
また少し涙を膨らませる有岡に、
「それは俺の行動がだよ。お前を可愛いって想いが一気に膨らんで、悪い男を演じて恋人でもないのに強引にキスした事が。そして、そんな自分を忘れたくてお前の為にって、いい格好して忘れようとした事が、だよ。」
なんの保身もなくやっと言えた。
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作者名：すみれ | 作成日時：2023年6月17日 2時
