キスと笑顔 (tk×ar) (ページ17)

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まだ少し泣いている有岡に手を伸ばしそうになって、どうにか指先をぐっと丸めて握り込んだ。
でも我慢すればする程、愛おしい、可愛い、そんな気持ちで心が溢れてしまいそうで。

触れたい。有岡、触れてもいい？

でもどんなに可愛くても、心が動いても、有岡は後輩で男だ。
こんな気持ちは今ならまだ忘れられる。

『……付き合ってはないけど、大人っぽく背も高くて美人な子は嫌いじゃないけど。』

冷たい態度を取れば、きっと忘れられる。

『子供っぽい奴よりはいいよな。』

心にもない事を言えば、それで。

有岡は我に返ったみたいにまんまるな目をぱちぱちさせた。
それから両手をそっと机の上に置いてじっと俺の顔を見て、ものすごく辛そうなのに無理やりにこっと笑って、
『……ですよねー。』
そう言ってから、またじわっと泣きそうになるのを誤魔化しながら、
『…先輩、先輩みたいにかっこ良くて悪い大人ってどうやったらなれるんですか？俺、子供っぽいの、ヤダ……。』
わざと不貞腐れてそう言った。
でもそれからふっとため息をついてそっと俺を見上げて、

『先輩みたいになりたい。……こんな子供みたいな俺を簡単に虜にして、相手にしてくれない悪い人に。』

切なそうに静かに微笑む。
少し色気を感じさせながら。