小さい羽、ひとつ。 (tk×ar)

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今日の分の撮影が無事に終わって車で移動している時、
「俺、監督に褒められたよ。有岡さんに教えてもらった所。」
雄也が言ってくれるから、
「あのさ、俺が言わなくてもちゃんと雄也は気付いて上手く演技出来たと思うよ。それよりさっき事務所から連絡あって、CM決まるかもしれない。」
俺が良いニュースを伝えると、
「マジで！？よっしゃ！」
雄也が素直に喜ぶのをにこにこ運転しながら聞いていると、
「ね、有岡さん、決まったら2人でお祝いしようね！有岡さん彼女いないんでしょ？俺も勿論いないし、2人きりでしよう！いいよね！？」
また後部座席から顔を近づけてくるから、いいよと答えた。


もちろん彼女なんていない。
この世で1番大切な人に抱く大好き、や、誰にもやりたくない、なんて感情はもうとっくに心の奥の奥に追いやってしまった。
ただ雄也が育っていく事だけに喜びを感じる、それだけ。


「…………良かった、有岡さんに彼女がいなくて。」
後ろから聞こえてくる心を揺さぶろうとするみたいな低く甘い声に、胸がほんの少し熱く、鋭く痛むとしても。

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