エンゲージリング (yt×in) (ページ31)

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2人で顔を上げると、ひと呼吸置いてからお父さんが、
「裕翔、明日会社が終わってから一緒に謝りに行こう。許嫁の件を断りに。お前は真面目で真っ直ぐで言う事聞かない子だったからこれ以上言い合っても無駄だ。………そんなに伊野尾くんが大事なのか？」
むすっとして言われるのに、
「とても。」
中島が答えてくれる。
「分かった。じゃあまた明日。もう帰りなさい………2人で。」
言ってくれて遂に涙がぽろっとこぼれる。
そしてまた深く頭を下げた。
ありがとうございます、と。

中島の実家を出て、勝手な事をしてごめんと謝ろうとすると、
「指輪、買ったの？」
と聞かれて、
「あ、うん。納得されたくて。って、本当にごめん！エンゲージリングとか、嘘ばっかりで……。」
怒られると身構える俺の左手を中島が両手で包み込んで、
「こんな事までしてくれるなんて。」
じっと指輪を見て、
「別れようって言ったのに、それなのに……。」
包み込んだ俺の左手を自分の唇に少し当てて、眉間に皺を寄せて苦しそうに目を閉じた。
「……………ありがとう、伊野尾、ありがとう………。」
お礼を言ってくれる。
中島は少し泣いてるみたいだった。

本当に泣いているなら涙を拭わないと。

右手を伸ばす俺に、
「伊野尾、指輪、一度外してもいい？」
と、中島が言った。