エンゲージリング (yt×in) (ページ28)

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中島のお父さんはしばらく黙って俺の指輪を見ていたけれど、
「………それがなんの証拠になるのかな。」
ゆっくりと落ち着いた声で聞いてきた。
怯みそうになるけど、
「立派な証拠だと思います。将来を誓い合って中島くんがくれたんです。」
俺もゆっくりと話す。
するとふっとため息をついて、
「本当に？」
また聞かれて、
「えっ？」
と俺が聞き返すと、
「その指輪を本当に息子が君に贈ったのか？わざわざ指輪を見せに来て、将来を誓い合ったと私に報告するのに、どうして君ひとりなんだ？」
思ってもない事を言われた。

浅はかだった。
指輪を見せれば大丈夫だと思っていた。

左手を下ろしてぎゅっと握りしめて俯くと、
「反論もできないなんて、言いがかりにも程がある。」
厳しい声で言われてから、
「全く、微笑ましくて可愛らしい許嫁がいる、それでいいじゃないか。一時的な恋愛ごっこに盛り上がってるだけだって、君もさっさと目を覚ましなさい。」

言われて心の中で何かが弾けた。

俺は顔を上げて、
「……そうだったら良かったんです。一時的なもので、ごっこで、すぐに目が覚めれば良かった。……だけど覚めないんです、ちっとも。だって中島が俺の事、好きだってずっと言ってくれるんです。」
俺は何故か微笑んでいた。