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夕方までひとり部屋で長い時間を過ごしてから、デパートで買い物を済ます。
慣れてない買い物に苦労したおかげで、中島の実家に着いたのは夜の7時を過ぎていた。
多分もうご両親とも、家にいるだろう。
ドアフォンを押すと、ピンポーンとありふれた音が鳴って、
『はーい、どなたですか?』
中島のお母さんらしい人が応えてくれる。
「中島くんの同僚です。」
それだけ言うと、
『…………少し待ってて下さい。』
沈む声に、何となく分かってるんだろうなとネクタイを締め直した。
同僚の実家になんて普通は行かない。
しかも中島が事情を説明して揉めた後だ。
緊張し出して中島の笑顔や声を思い出していると玄関の扉が開いて、
「伊野尾さん、よね?」
中島のお母さんが顔を出す。
少し微笑んでくれていた。
泣きたくなる。
「私はどちらでもいいの。けどお父さんが面子がどうのこうのって。あちらのお嬢さんには悪いけど、恋はね、仕方ないわよね。………どうぞ。」
中に通してくれる。
心が少し強くなれた。
ダイニングに入ると、4人がけのテーブルにすらっとして渋くてかっこいい人が座っていた。
中島のお父さんだ。
むすっとしてる。……中島に似てる?
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作者名:すみれ | 作成日時:2023年9月8日 1時