68 ダメだった ページ18
「焦凍ォォォォ！！」
遠くからものすごく大きなお父さんの声が聞こえたけど、何を言っているのか全く分からなかった
これから炎を使う焦凍はお父さんにこれからも訓練をならい続け、きっとクラスどころかヒーローの中でも屈指の実力者になるだろう
そしてビルボードチャートTOP10に載るような大物になる
そこで私は置いていかれ、そして多くの時間は要さずに忘れられていくのだろう
そうだ、私は逃げたのだから忘れられて当たり前なのだろう？
……私では、ダメだった
彼に言葉を掛けることだけでは無い
心の支えにも、ストレスからの盾にも、吐き溜めさえもなれず
なにもかも、私では彼の背中を押すことすら
彼、緑谷出久のように自身の体を二度と動かぬかもしれぬほど、しかしそれをも厭わずに彼に言葉1つ伝えられない
全部、ダメだったのだ
「…あ」
途端世界が闇にのまれたように白黒になった
比喩ではなく、本当に自分の手は灰色に、着ている体操着は黒地に白いラインが入っているようにしか見えなくなった
何度まばたきしても青やベージュが戻ることはなく、砂嵐のある古いテレビのように世界は酷く濁って見えるようになった
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
2回戦の緑谷出久ＶＳ轟焦凍の戦いの途中からほとんど記憶が無い
気がついた時には3回戦も決勝も終わり表彰式までもが過ぎ去っていて「揺黒、俺達も戻ろう」と砂藤に話しかけられてやっと脳が覚醒した
相変わらず目の前は白黒で、着替えの時も白いワイシャツとグレーのジャケット以外まともな色別がつかずとても困惑した
そしてその体育祭から数日が経ち今は振替休日の月曜日
「んで俺がテメェの家に来なきゃならねぇんだ揺黒ォ…！」
私は今家にトゲトゲ頭でお馴染みの彼、爆豪勝己を呼び出した
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作者名：すみれ | 作成日時：2022年9月3日 21時
