66 そっくりさん ページ16
いくつものことを話す度、涙は溢れ続けてどんどん化粧は落ちていったとおもう
彼が泣いている姿を見かねてスポーツタオルを無言で顔に押し当ててきた時、「は？」とタオルについた黒い落ちた化粧の跡とすっぴんの私の顔を見てギョッとしていたのは見物だった
しばらく苦しくなったり楽になったりする呼吸を繰り返した後、ある程度冷静になったので壁に手を伝いながら立ち上がった
「…ごめん、タオル洗って返す」
「別にいいわ。
それよりかお前の顔が半分野郎に生き写しレベルで似ててお前が泣き止んだ途端こんどはこっちが気分悪くなったわ｣
「はは、笑える」
「わらうなや！」
私の顔…正確にはすっぴんを焦凍を知った状態の人が見てギョッとするのは結構慣れてたりする
親戚の人も産まれたての私たちの顔を見て、それまでの兄姉とは雰囲気が違う上に目元や口の形が本当に瓜二つで
｢双子って凄いのねぇ…」と産まれたことへのお祝いより先に感激の眼差しが向けられていたと冬美姉は話していた
どこかプライド高さ故に怒り以外の感情をあまり表に出さない彼から明らかなそれまでとは違う困惑や驚愕の表情が現れて面白かった
「つーかてめぇ氷の個性持ってんだろうが、冷やせねぇのか？目」
「ああ、出来る出来る気づかなかったわ。ありがとう爆豪…なんで氷って分かったの？｣
「そんぐらい考えろや……って、お前、目」
「？……ああ、カラコンだよこれ」
目元を見ただけで驚いた彼がこんどはカラコンを外したマジの目の色を見てまた驚いた
2連撃クリーンヒットってやつ？
「やっぱ半分野郎…つーよりかやっぱエンデヴァーだな色は」
「やっぱ両目同じだと焦凍よりか面影出来ちゃうよね〜。
小学生になる前に公園であった見知らぬ同じくらいの歳の子に「おまえエンデヴァーに似てるな！強いのか？」て話しかけられたもん｣
くだらない話をしながら目元に氷を当てつつ、汗で落ちた眉や頬を汗を拭き取りながら化粧直しを始めた
その間も爆豪はじっと見つめていたが特に何かコメントしてくることは無く、私がキッチリ目尻からタレ目のラインを引き終わるまで待っていた
「ふぅ、メイク直し終わりっと」
「直すのに20分は長ぇわクソ」
「はは、ごめんごめん
…んじゃ、このことはくれぐれも“俺”とお前だけで内密に」
「…ハッ、わぁっとるわ“揺黒”」
俺、という言葉を皮切りにまた男声に戻せば爆豪はバカにするような笑いを返してきた
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作者名：すみれ | 作成日時：2022年9月3日 21時
