65 涙が、ね ページ15
「はぁはぁ…」
空間が途切れたと認識した途端緊張がどっと溢れて、ズルズルと壁に背中を預けて座り込んでしまった
冷や汗と脂汗で視界はぐちゃぐちゃで、鏡を見ている訳ではないが自分がものすごく酷い顔なのは理解出来た
「チッ」
ぜーはーと息を吐いているとこちらを見た爆豪が舌打ちをした
「…戻らないの？爆豪」
顔になにか付いているのだろうか、不愉快ならもう観覧席の方に戻ればいいのに
「……テメェがんなボロ泣きしてやがんのに今戻ったら後味わりぃじゃねぇか」
「え？」
そう言われて目元に手を伸ばし触れてみれば確かにそこからは所謂涙が溢れ出していた
「あはは…はは…はぁ」
「なに笑ってやがんだよ気色悪い」
…おかしいな、
なにわらってやがる、なんて言われてもどうしようもない
だってすごくおかしくて仕方がないんだ
……本当に、おかしい
私あんなこと言われたくらいで普段ヘコまない
仕方ない、そういう意見、戯言だって全部全部受け流すことができてたはず
「……泣いてないよ」
「もうちょいましな嘘つけや、先にきづいたのがおれなんだからよォ｣
こんな顔、表情も落ちかけの化粧も酷い状態のはずだから隠したいはずなのに、何故か私は上を向いてはは、と笑ってるんだ
やっぱりおかしい、わらっちゃう
「…んな気色悪い反応見てこのまま戻れるわけないだろうが、とっとと理由はなせ」
「…どーしよっかな？」
「ぶんなぐるぞ」
「はは、うそうそ、……君ならいいかな
“私”のことはなしても」
私、といって声を戻せば目を見開いてぱちぱちと瞬いてる彼は驚いた
おもしろいな彼
私は話した
自分が轟焦凍という男の“あいつ”と呼んだ双子の姉であることを
昔から姿を変えて世間に出ていたから今更変えたくないし、実は今回は完全に焦凍に秘密で雄英高校に通っているということ
泣いてしまったのは嘘がばれていたのが盲点で酷い言いようのあまり悲しかったと
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作者名：すみれ | 作成日時：2022年9月3日 21時
