輩先生と純情びっち【鬼滅の刃】

（18）時透弟 ページ19

「Aだ」




その冷めた声にバッと顔を上げると綺麗な長い髪と矯正な顔が目に入る。


そういえば今日宇髄先生出張でいなくて、美術室で待ち構えていた不死川先生から命からがらここ、中等部の空き教室に逃げてきたんだった。



中学の時からキメツ学園通ってる私にとってもう第二の我が家みたいなもんだよね！


どこが空き教室かぐらい、自分ちの洗面所探すぐらい簡単だし！




「えっと、んー……有一郎！」


「ぶっぶー。僕だよ、無一郎だよ」


「くっそー…」




時透兄弟とは行き帰りの電車が同じで、そこから知り合った。



同じ電車の1号車と3号車に同じ人乗ってるんだもん。

あの時はまじでびびった。



ドッペルゲンガーだと思って、声にならない声をあげて逃げ出した私の手首を掴んだのが無一郎。


皆さんご存知、大人しそうに見えてすぐ手が出る方。





「何してるのこんなとこで。

中等部だよ、ここ」


「見たらわかるでしょ」


「いやさすがに分かんないよ」




そう言いながら無一郎は、私が伏せて眠っていた机の上にヒョイッと座る。


身軽なもんだねえ、若い子は。




「またサボり？」


「言い方が悪いね。休憩だよ休憩」


「へぇ、休憩」




黒髪無一郎は私の茶髪に興味があるのか指先に巻き付けてクルクルと遊ぶ。


こないだ明るくしすぎて怒られたから近いうちにトーンダウンさせにいかなきゃなー。




「無一郎こそ何してるの？」


「僕？帰るから兄さん待ってる」


「えっ、まだ昼休みじゃ」


「中等部は短縮授業だからね」





ずるい！！

とてつもなくずるい！！！



自分が中等部所属だった頃は、中学だけ短縮授業のとき高校生大変だなーとか思いながら帰ってたのに。


帰りたいけど昼からは地獄の数学と、だいすきなカナエ先生の英語があるから帰れない。





「私も教室戻るかあ」


「友達いないの？」


「いるわ！しのぶっていう完璧ガール！」





ぼけーっとして可愛らしい顔してるくせに結構痛いとこついてくるのがこの兄弟。


いや友達いるからね？

てかむしろ多い方だからね？





「中等部でも話題だよ、A」


「そんな有名人と仲良くできて良かったねえ無一郎」


「それ自分で言う？」


「さーせん！」




年下に手のひらで転がされる綾瀬A 18歳。




「でもA僕のお気に入りだから卒業しないでね」


「え、何それ可愛い。卒業はしたいけど可愛い。

アイス奢ってあげる」


「手口が誘拐犯」

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