5 ページ5
ふわふわと頭を撫でられるような感覚がして
意識を戻すと、景色の良い丘の上に立っていた
振り返っても誰もいない
またふわふわと頭や頬を撫でられる感覚がして、優しい風が吹いていることに気づく
温かくて気持ちが良い…
いつのまにか丘の上に寝ころんでいて
気持ちの良さに目を閉じる
いつまでそうしていただろうか
再び目を開けると、そこは自分のベッドだった
夢？久しぶりに見たかも…と思いながら体を起こす
ふと隣を見ると誰かが寝ていたような痕跡
ハッとして起き上がり、誰もいないリビングに焦りながら玄関まで向かった
そこには、見慣れた私の靴だけ
でも確かに昨日乱暴に脱ぎ捨てたはずの靴が揃えられていた
『一未、帰ってきてたんだ…』
顔を見たかったし、話したかった
そう思ってすぐ、話さなければならないことを思い出し顔をしかめる
今の状態を少しでも前進させてから話したかった話だ
それでも昨日は一未が隣で寝ていたんだと思うと口元が緩む
ひとりで悩んでいたって何も解決しない
『よしっ』
次こそは待ち構えて話をしよう
…そう決意したのに、一未が帰ってくるのは数日に一度
見計らったかのように眠りについた後の時間
今日こそは！と待ち構えても帰ってこないし、そうかと思えば連日帰ってきていたり
起きれれば良いのだが、睡眠がとれなかった時とは打って変わって
最近はとにかく眠い
夜中目が覚めて、隣で一未が寝ているときもあったが
さすがに夜中に叩き起こす勇気までは持ち合わせていない
そうこうしてる間に刻々と時間は過ぎる
先延ばしにして良い話ではないのに…
意を決して
「今日帰ってこれない？話したいことがあるの」
何の話しか聞かれたらどうしよう
と思いながら、濁すことも出来ずメッセージを送る
仕事中なのか、すぐに返事は来ない
そわそわ待っていても
精神的に良くないだけだ
決意の気合いを込めて、仕事を終えていた洗濯機から洗濯物を取り出して干していく
『ふぅ、、』
怠い身体は気合いをいれても、やっぱり怠くて…
いつもより時間をかけて干し終わる
ソファに倒れこむように座ると
一未からメッセージがきていた
「悪い、張り込み続きで帰れない」
そうだよね…と自分に言い聞かせる
一未は忙しい
でも、、何の話しか興味もないんだね、
『堪えるなぁ、、、』
嗚咽と共に涙がこぼれる
迷って迷って、気にしないでの意味を込めて精一杯明るくメッセージを返すと
スマホをクッションに放った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 93人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さつき | 作成日時：2020年11月27日 22時
