第一話 残酷 ページ2
__幸せが壊れる時はいつも血の匂いがする。
第一話 〜最終選別〜
季節は夏、九歳になったばかりの時だった。あの日はいつも通りお父さんとお母さんに「おやすみ」と言った後自分の部屋へと戻った。明日もお父さん達は朝から町へと出かけていく。商品を売りお金を稼ぐためだ。だから私はいつも昼間は家に一人でいなくちゃいけなかった。山奥の小さな家に一人・・・・・・寂しいとは言わなかった。辛いとも思わなかった。
だって休みの日にはお母さんが遊んでくれるから。仕事が終わったら一緒にご飯を食べてくれるから。家の家事の頼まれていない事までやったらよくやったね、って微笑んで頭をなでてくれるから。嬉しさがあったから、埋め合わせがあったから、一人の時間も退屈じゃなかった。
アカネ(なんなの、この臭いは・・・・・・)
寝惚け眼を擦りながら起きると、とりあえずお母さん達の所へと歩く。瞬間何かが潰れたような音と高高い悲鳴が聞こえた。頭が一瞬真っ白になる。何が起きているのか分からないまま震える足を無理やり持ち上げ、両親が眠っているはずの部屋の襖をそっと開けた。襖を開けるとまず、むせ返るような生臭さに襲われ思わず吐き気を催す。
前を見るとそこには部屋一面が赤黒く染まり、返り血を浴びたお母さんが泣き叫んでいた。そしてお父さんを喰らう一匹の、鬼。においとあまりの惨状に眩暈がしたが私は固まったようにそこから一歩も動けなかった。どこかを見つめたまま立ち竦んでしまう。
鬼はちょうどお父さんと同じくらいの背丈で、でも体格はお父さんよりも一回りデカかった。鬼は私に背を向けていたので私の存在には気づかなかったが、お母さんはこちらを見る・・・・・・いや、一瞬しか見なかったかもしれない。ただ、お母さんは鬼に背後から抱きつき頸を絞めて『ッ逃げなさい!!』と叫んだ。こちらも見ずに叫んだ。しかし私に向けて言われたのだとすぐに分かった。反射的に部屋の外へと出た。そして走り出す・・・・・・・・・だが、すぐに足が止まってしまった。
逃げる、にげる、ニゲル?どこに?私の居場所なんかここしかない。なのにどこに逃げろっていうの?お父さんは?お母さんは?ねぇ、私はどこに行けばいいの?そしてその直後お母さんの悲鳴が再び聞こえた後バキバキと何かが折れた音。そして潰れるような音がすると辺りは静かになった。
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作者名:ミミ、みあ@、黒魔霊歌 x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2020年8月7日 0時