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「それじゃAちゃん、気を付けて帰るんだよ」
『もう扉目の前だけど…』
私たちの家は3軒並んでいる。
家を前にして、左から私、徹くん、一くんの家。
『じゃあ二人ともおやすみ』
「おやすみ〜」
「おう、また明日な」
二人はいつも私が家に入るまで見送ってくれる。
もう少しだけ一くんの顔を見ていたい、なんて思ってみても体は勝手に家に入ってる。
部屋に入って、制服から部屋着に着替える。
シャツを脱いだその瞬間。
「Aちゃーん、及川さんだよー」
『ギャー!』
徹くんの部屋の窓と向かい合わせになっている自分の部屋の窓が開けられた。
え、なんで鍵が閉まってないかって?
ここは宮城ですよ。
田舎に鍵閉める習慣なんてない…はず。
「うわぁああ、ごめーん!」
慌てて後ろを向く徹くん。
私も急いで着替えた。
『あの、それでどうしたの?』
「んー、あと少しで春高予選じゃん?」
『そうだね』
「もちろん優勝する気ではあるよ?でもさ、なんか…」
初めて見る主将の不安そうな表情。
そうだ。
いつもチームメイトの不安を抱えてきたのがこの人だ。
『きっと大丈夫。徹くんはいつもみんなの最大値を引き出してきたじゃない』
私はコートに入って闘うことはできない。
『うちには花巻さんや松川さん、金田一くんに国見ちゃんもいる。…そして何よりエースがいる。徹くんはひとりじゃないよ』
こんな言葉しかかけてあげられないけれど。
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作者名：すみのん。
| 作者ホームページ：https://twitter.com/EnstKuro
作成日時：2017年10月7日 6時
