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side Yahaba
「岩泉、さん…」
よりにもよってこの人に見られるなんて。
岩泉さんは少し困惑気味に笑って
「悪い、見るつもりはなかった」
そう言って落とした紙袋を拾い上げて走り去る。
何か、誤解させてしまった。
それでも俺は、Aを岩泉さんのところに行かせたくないと思ってしまった。
『一くん…!』
岩泉さんを追いかけようとするAの手を掴む。
振り返った彼女。
俺は
「行くな」
の一言しか出なかった。
一度俺の方を向き返り、Aは言う。
『…ごめん。矢巾のことは好きだけど、一くんとは違う好きなの』
わかってるよ。
俺だってお前の邪魔なんてしたくない。
でも、でも…
岩泉さんのこと、追いかけてほしくなかった。
「そっか、」
笑う事しかできなかった。
足音が遠ざかる。
Aの姿が、小さくなる。
視界が、滲む。
流れ落ちると、やがて溢れて止まらなくなった。
「ちくしょー…かっこわる」
「俺はかっこよかったと思うけど」
後方からの声にはっとして顔を上げる。
尊敬してて
そんでいて俺と同じ人が好きな先輩。
「少なくとも、ビビって何もできない俺よりはね」
「おいかわ、さ…」
俺の高校一番の恋、玉砕に終わる。
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作者名:すみのん。 | 作者ホームページ:https://twitter.com/EnstKuro
作成日時:2017年10月7日 6時