セコム。08 ページ9
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『一静さんありがとう。うちの人にも改めてお礼言わないとね』
松川「いや、気にしないで。それにしても考えたね。校庭に特設ステージ作るなんて」
『生徒会選挙の時に誓ったの。勉強や部活に全力で取り組める学校作りをするって。その為に私はできることをしただけ』
松川の掌が優しく黒咲の頭に乗る。
"頑張ったね"と優しく労えば、彼女の顔は少し緩んだ。
『文化祭は楽しめそう?と言っても、私が呼び出してしまったけど』
松川「…初めての景色だったよ。楽しい、ありがとう」
『潔子が言ってたの。"一静は私と同い年なのに自分のことはずっとほったらかし。私のことばっかり気にしてる"って。
一静さん進学しないつもりでしょ?だったらこの文化祭が最後の学校行事。
あなたの青春時代は全て私たち姉妹が奪ってしまったから、せめて今日くらいは普通の高校3年生でいてほしかった。
一静さんのおかげで私と潔子は普通の女の子でいられた。今でもその恩は忘れてない。…本当にありがとう。
そしてできるなら、もう自分の為に生きてほしい』
自分の為に生きる。松川にその概念はなかった。
両親を亡くし、身寄りもなく路頭に迷っていた自分を救ってくれたのは紛れもなく黒咲の父だった。
松川にとって、2人の為に最善を尽くすのが生きる理由。
『黒咲の義理なんてもうとっくに返してもらってるわ。ううん、むしろ多く貰いすぎたの。私が恩を返さなきゃ』
松川「うん、俺は自分が生きたいように生きるよ」
黒咲はその言葉に微笑んだ。
松川「俺はAが嫌だと言うまでお目付け役をし続けるよ。毎日味噌汁だって作り続ける」
『…ありがとう。でも、お味噌汁作る相手はもう少しちゃんと考えてちょうだい』
松川「!」
黒咲Aは頭がいいが、頭が弱い。それは事実だった。
しかし
松川「少し、大人になったのかな」
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作者名:すみのん。 | 作者ホームページ:https://twitter.com/EnstKuro
作成日時:2018年4月24日 1時