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もうこんなに暗くなっている。
急いで帰らないとお兄ちゃんもお父さんも心配してしまう。栗の採集に熱中していた私は、時間の経過に気付いていなかった。
山を下る。
丘の所までやってきた。村が一望できる場所だ。
「……既視感…?」
なんだ、なんだ、なんだこれは、
村の様子がおかしい、ついでに言うと私も何かがおかしい。
慌てて自宅へと向かう。栗を玄関に置いて部屋へと向かった。
「誰も、いない…」
ふと部屋を見渡す。鏡に移るのはいつもの自分だ。
本当にいつもの自分だろうか。訳が分からない。
父の日輪刀がないことに気付く。
_________私は、これを、知っている…
「今度は」鈴木さんの家にはお邪魔しなかった。
一直線で兄の元へと向かった。
「お兄ちゃん!お父さん!」
「…!?A、帰ったか!風翔!Aを連れて、どこか遠くに逃げなさい!」
違う、変わっている、確実に変わっている。
変えていいのかは、分からない。
「……でも!お父さんだけ置いていけないよ!」
これを言ったのは、私だった筈だ。
「そうだよ!お兄ちゃんの言う通りだよ!」
無自覚的に、そう言っていた。
戻された……なんで…?
父の正面に立っている男は薄気味悪く笑っている。
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作者名:霜月 | 作成日時:2019年10月13日 22時