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#256 ページ29

触手というのは、意志の強さで動かすものらしい。


殺せんせーが少し焦りながら、その説明をする。


イトナに力や勝利の執着がある限り、触手細胞は癒着して離れないのだという。


「そうこうしている間に肉体は強い負荷を受け続けて衰弱してゆき、最後は触手もろとも蒸発して死んでしまう」


残酷な光景が、私達の頭を過る。


いくらなんでもそれはないだろう、と。


「後天的に移植されたんだよね?
なんとか切り離せないのかな」


メグが、何か解決方法はないのかと尋ねる。


しかし返ってきた返事はそう簡単なものじゃない。


力への執着を消す事。


それが条件だからだ。


つまりその為には……。


「そうなった原因を知る事、ねぇ……」


「…でもなーこの子、心閉ざしてっから」


「身の上話なんて素直にするとは思えねーな」


早速行き詰まる会話。


携帯ショップばかり狙ってた事に関係があるとは思うんだが……。


皆が色々と考えこんでいる時、ふいに優月が携帯を確認する。


「その事なんだけどさ、気になってたんだ。
どうしてイトナ君はケータイショップ襲ってたのか」


律に調べてもらったという優月に、皆が耳を傾ける。


それから私達の携帯にある画面が表示された。


そこに書いてあったのは、【堀部電子製作所】と書かれたもの。


「堀部イトナって、ここの社長の子供だった」


優月の言葉に、私達は驚きを隠せない。


スマホの部品を提供していたのだが、一昨年に負債を抱えて倒産したらしく。


社長夫婦は息子を残して雲隠れ。


……これが、イトナが力や勝利を欲しがっていた理由。


皆同様に息を呑む。


だが、その場に不釣り合いな男がいる事を……私は忘れていた。


「ケ、つまんねー。
それでグレただけって話か」


「寺坂!」


磯貝の注意も知った事かと一瞥した寺坂。


お前がそれを言うかとは思ったものの。


口には出さずに寺坂の行動を黙って見つめる。


「皆それぞれ悩みはあンだよ。
重い軽いはあンろーが」


そう言ってから、吉田と村松の肩に手を置く寺坂。


「けどそんな悩みとか苦労とか、わりとどーでもよくなったりするんだわ。
俺等んとこでこいつの面倒見させろや。
それで死んだらそこまでだろ」


なんとも適当極まりない言葉。


だが、彼に任せようという気になってしまうのだから……。


案外私もろくな人間では無いのかもしれない。

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設定タグ:暗殺教室 , 赤羽業   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:聖泉りか | 作成日時:2015年12月12日 12時

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