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触手というのは、意志の強さで動かすものらしい。
殺せんせーが少し焦りながら、その説明をする。
イトナに力や勝利の執着がある限り、触手細胞は癒着して離れないのだという。
「そうこうしている間に肉体は強い負荷を受け続けて衰弱してゆき、最後は触手もろとも蒸発して死んでしまう」
残酷な光景が、私達の頭を過る。
いくらなんでもそれはないだろう、と。
「後天的に移植されたんだよね?
なんとか切り離せないのかな」
メグが、何か解決方法はないのかと尋ねる。
しかし返ってきた返事はそう簡単なものじゃない。
力への執着を消す事。
それが条件だからだ。
つまりその為には……。
「そうなった原因を知る事、ねぇ……」
「…でもなーこの子、心閉ざしてっから」
「身の上話なんて素直にするとは思えねーな」
早速行き詰まる会話。
携帯ショップばかり狙ってた事に関係があるとは思うんだが……。
皆が色々と考えこんでいる時、ふいに優月が携帯を確認する。
「その事なんだけどさ、気になってたんだ。
どうしてイトナ君はケータイショップ襲ってたのか」
律に調べてもらったという優月に、皆が耳を傾ける。
それから私達の携帯にある画面が表示された。
そこに書いてあったのは、【堀部電子製作所】と書かれたもの。
「堀部イトナって、ここの社長の子供だった」
優月の言葉に、私達は驚きを隠せない。
スマホの部品を提供していたのだが、一昨年に負債を抱えて倒産したらしく。
社長夫婦は息子を残して雲隠れ。
……これが、イトナが力や勝利を欲しがっていた理由。
皆同様に息を呑む。
だが、その場に不釣り合いな男がいる事を……私は忘れていた。
「ケ、つまんねー。
それでグレただけって話か」
「寺坂!」
磯貝の注意も知った事かと一瞥した寺坂。
お前がそれを言うかとは思ったものの。
口には出さずに寺坂の行動を黙って見つめる。
「皆それぞれ悩みはあンだよ。
重い軽いはあンろーが」
そう言ってから、吉田と村松の肩に手を置く寺坂。
「けどそんな悩みとか苦労とか、わりとどーでもよくなったりするんだわ。
俺等んとこでこいつの面倒見させろや。
それで死んだらそこまでだろ」
なんとも適当極まりない言葉。
だが、彼に任せようという気になってしまうのだから……。
案外私もろくな人間では無いのかもしれない。
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作者名:聖泉りか | 作成日時:2015年12月12日 12時