#252 ページ25
「イトナは何で触手を手にしたんだろうね?」
唐突に投げた私の言葉は誰にも拾われる事はなく。
だがしかし、その場の空気を一変するのには十分だった。
「ずっと言ってたじゃん、イトナ。
強いとか証明とか……そういうの」
私の言葉に思い出そうとしているのか、少しざわついていたその場が一気に静まり返る。
だいぶ間を取ってから、私は再び口を開いた。
「殺せんせーを殺すのなんて、その強さを証明する為の手段でしかない。
触手を手にしたのだって、強さを手に入れる為なんじゃない?」
「だからって……イトナを助ける理由にはなってないだろ」
弱々しく、私に反論した前原。
私は苦笑しながらそうだね、と頷いた。
「じゃあさ、イトナに触手を与えたのは?
無責任な……中途半端な強さを与えたのは?」
「そんなの、シロしかいないよ」
「でしょ?
イトナだって、シロの【殺せんせーを殺す】って計画に利用されてたんだよ。
だから、私達と同じ…………同じなんだ」
それで……十分じゃないのか、助けに行く理由なんて。
誰も何も言えなくなったのか、しんと静まり返る教室。
私はもう言う事は無いだろうと歩みを進める。
それから教室を出る前に、振り返って
「それに……私まだ羊羹のお礼してないしね。
殺せんせーが行ってんだからしょうがない」
そう、肩をすくめて言ってみせた。
すると、心底面倒臭いと言わんばかりの溜息。
言わずもがな、業だ。
「有里だけじゃ何も出来ないでしょ」
「それは……」
「俺も行く」
言葉に詰まった私に、しょうがないと立ち上がる業。
そんな彼を筆頭にして、他の皆も動き始める。
唖然として教室の前で固まっていると、早く行くよ、何て言って業が私の頭に手を置く。
「……わかってる」
嬉しさを隠す様に、少し俯いて呟く。
そうして私達はイトナを助けるべく、動き出したのだった。
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作者名:聖泉りか | 作成日時:2015年12月12日 12時