＃２３０ ページ3
大量の卵は、マヨネーズ工場の休止ラインを借りて機械で割って混ぜてもらい。
それに砂糖と牛乳、バニラオイルを混ぜる私達。
卵をタンクからホースを通して送っているところを見ると、何ともまあシュールな絵面ですこと。
「でもさカエデちゃん、前に巨大プリン失敗してたよ。
大きすぎて自分の重みでつぶれちゃって」
混ぜながらカエデに問う陽菜乃。
今それを言うか。
かわいいから許す。
「その対策として凝固剤にはゼラチンの他に寒天も混ぜてる。
寒天の繊維が強度を増すの」
陽菜乃に寒天を見せながら答えたカエデに、私は感心する。
だいぶ深い部分まで考えられていて現実味がある。
プリンの事になるとカエデはここまで変わるのか。
「しかも寒天はゼラチンより融点が高い。
つまり熱で溶けにくいから、９月の野外でも崩れにくくしてくれるの」
カエデの説明に、聞いていた人達は感心の声をあげた。
……ごめん、９月普通に寒いって思ってんのあたしだけ？
それからも徐々に進んでいく巨大プリン作り。
下の層はゼラチン、上の方は生クリームを多めにして、自重をしっかり支えつつ上はふんわりとなるように注ぐ。
そんな作業の中、カエデはメグに何かが入った箱を渡す。
メグはそれを手にとって疑問を口にした。
「なるほどね〜、オブラートで包んだ味変わりか。
……参考元はプリネーぜの四層プリン？」
私はメグの手元を見ながら顎に軽く手を添えて尋ねる。
「そう、ずっと同じ味ばっかじゃ飽きちゃうでしょ？」
「フルーツソース、クリームソースが溶け出して味に変化がつく部分が生まれる訳ね」
すげえカエデ。
頷きながら改めてこのプリン作りの行程に感心するばかりだ。
「…………何だよ前原」
不意に視線を感じて振り向くと、そこにいたのは思いっきり眉をしかめた前原。
「いや……なんか水崎が女子みたいな事言ってるから変な感じするっていうか…………」
殴りてぇこの男。
取り敢えず、無言で膝の裏に回し蹴りしときました。
ガクッてなった！！！
はっ、だっせ！！！！！！！
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作者名：聖泉りか | 作成日時：2015年12月12日 12時
