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＃６０５ ページ19
「有里」
翌日の夜7時。
予め決めておいた待ち合わせ場所にて、業と約1年ぶりの再開を果たす。
忙しいながらも年に一度はパリに会いに来てくれていて、本当に出来た彼氏だ。
「久し振り、業。
……ただいま」
「お帰り」
仕事帰りらしい業は、スーツ姿で前髪を後ろへ流して固めている。
パリで会ったのは勿論仕事という訳では無かった為、その姿を見るのは初めてだ。
この人に毎日ただいまやお帰りを言うのは、私でありたい。
この人の、帰る場所でありたい。
『国家公務員総合職は2〜3年で転勤だしここで身を固めとくのも、ね……』
兄がそんな事を言ったせいで、何だかやたらと意識してしまう。
「有里聞いてる？」
「えっ、あ、ごめんなに？」
じっと見つめていたらしく、業は訝しげに腰を折って屈み私の顔を覗き込む。
数秒その体勢を維持してから、まあいいやと元に戻す。
「飯、何処か行きたいとこある？」
「えー……っと……」
ああもう、スーツ姿なんてズルすぎ。
いい歳して意識しすぎている自分に半分くらい腹を立てながら、吐き捨てるように リクエストをした。
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作者名：聖泉りか | 作成日時：2018年4月7日 16時
