＃４６ ページ47
渚side
雪乃ちゃんは、業君の指示通り机の上に立って歌い出す。
どうやら、注目を集めて話を聞いてもらおうという考えらしい。
あそこまで仕上がった別人の様な彼女に、歌手だと気付く人はあまりいないんじゃ無いかという不安は、一瞬にして消えた。
迫力がまるで違ったのだ。
すぐに雪乃ちゃんの歌がその場を支配する。
全員の目がこちらを向いた事を確認すると、メガフォンを借りて話しだす
「皆さん、聞いてください。
今の爆発は2階と3階を繋ぐ全ての道が破壊された物だそうです」
落ち着いた声で今の状況を説明する雪乃ちゃん。
その手は僅かに震えていて、きっとここにいる人達と同じ気持ちの筈だ。
辺りに動揺が走る。
それを宥めるように、自分の不安を押し込めて優しく声を掛ける。
「落ち着いて下さい、大丈夫です。
犯人は私達をどうこうしようという気は無いようです。
時間はあるので、ゆっくり、確実に建物から避難してください」
そう言ってから机を下りた雪乃ちゃんは、それから恐怖で自分を抱き締めながらその場で縮こまった。
「雪乃、大丈夫だから」
業君がそばに来て声を掛ける。
ここにいた全ての人の命が、雪乃ちゃんがどれだけ人を惹きつけられるかにかかっていた。
相当なプレッシャーがかかっていた筈だ。
やがて業君に支えてもらいながら立ち上がった雪乃ちゃんは、
「ごめん、もう大丈夫だから、私達も避難しよう」
覇気のない声でそう言った。
そして、ふと3階を見上げる。
「っっっ！！！」
目を見開いてある一部を凝視したかと思うと、支えられていた腕を振り払って出口とは逆方向に走りだした。
「雪乃！？」
業君は直ぐにその後を追い掛ける。
僕は数秒迷ってから、先に避難してと伝えてから追い掛けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：聖泉りか | 作成日時：2015年2月9日 2時
