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土曜日の朝。
休日は目覚まし時計なんてものは使わずに起きるのが主流な私だが、この日は7時という中々早い時間帯に起きた。
今日は皆出掛けるのか。
考えないようにしていた筈なのに、ついつい頭を過る。
「あーあ、やっぱ行きたかったなー」
「じゃあ行けば?」
「行きたいって言って行けたら苦労しないよ」
独り言に返事が帰ってくる。
その違和感に、暫くしてから気づいた。
「………って、はぁ!?」
「おはよ〜」
「おはようじゃないわ、どっから入ってきた」
「そこの塀登ってベランダから」
「それ不法侵入!!」
そう、何故か部屋の中にいたのは業だった。
部屋の真ん中に立って伸びをする私に、そこにいるのが当然のような顔をしてベッドに腰掛けた業。
アンバランス過ぎる。
「可笑しくない?
何でアンタがここにいんのよ、出掛けるんじゃないの」
不機嫌にそう投げた言葉は、業に効かないのはわかっている。
「そうなんだけどさー。
雪乃、ホントは行きたいんでしょ?
だから迎えに来た」
何を考えているのかわからない顔で笑う業。
だから行きたくても行けないんだってば。
そう目で訴える。
「自分が行って一般人にばれたら皆に迷惑かかるから、とかくだらないこと考えてたんじゃない?」
図星過ぎて言葉が詰まる。
眉を潜めた私に、業はニヤリと笑う。
「俺が別人に変えてあげるよ」
…………嫌な予感がした。
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作者名:聖泉りか | 作成日時:2015年2月9日 2時