【暗殺教室】心の奥に (ページ29)

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急に現れたマネージャーに、一瞬体が跳ねそうになった。

私はいつもの笑顔を貼り付けてから、

「わかりました」

とだけ答えた。

「ごめんね皆、また明日」

小さく手を振って車に乗り込む。

業も渚君も、きっとこの偽物の笑顔……偽物の私には気付いているのだろう。

訝しげな顔をしている。

「仕事って何？」

「クラスメイトの目がないとすぐ態度が悪くなるんですか」

「自分を道具としてしか見ていないような人に愛想良くなんてしない。
それに、クラスメイトじゃなくて友達よ」

「ふん、くだらん。
今からの仕事は雑誌の取材だから、くれぐれもへまはしないで下さいよ」

発進した車の中に、ひどく冷たい空気が流れる。

私は初めて事務所に顔を出した時を思い出す。

そこは、今にも倒産しそうな小さな事務所だった。

だが、私の名前が売れ始めた頃、今の事務所がそこを潰しにかかったのだ。

たったひとつ、潰さない条件として自分の系列に入り私のマネージャーの交代を要求した。

異例な売れ方をした私を彼らは欲したのだろう。

それを受け入れた私は、このマネージャーにあたった。

あの時の選択が正しかったのかはわからないが、後悔はしていない。

一体、何時までこのままなんだろうと静かに目を閉じると、自然と涙が流れ落ちた。