#16 ページ17
「ただいま……」
私は玄関に入ってから、低く呟く。
置いてある靴は三足。
父と母………それからマネージャーだ。
「おかえりなさい、雪乃。
お邪魔しています」
マネージャーは、私を見るなり口を開く。
今年で30を迎える男性で、正直に言って嫌いだ。
私の意思を尊重して芸能活動を行なっていく、何て表ではいい事言っといて全く私の意思なんて欠片も考えていない。
「今日は打ち合わせをするから早く帰ってきてくれと言ったはずなんですがね。
遅いと思ったら男とイチャついていたんですか?
………言っておきますが、今後スキャンダルになるようでしたら…」
「わかってる!
何ども何ども言わないでよ!!」
マネージャーの言葉を遮るように叫ぶ。
「ただじゃすまさないって言いたいんでしょ?
そんな事、もう聞き飽きた。
それよりさっさと用件話して帰ってくんない?」
「……お前、何時からそんな大口叩くようになったんだ?」
急に立ち上がったマネージャーは、こちらに歩み寄ってきて手首の下当たりを乱暴に掴む。
服で、隠せる位置だ。
それから力いっぱい握りしめる。
「いっ……た…」
「言ったはずだ。
お前は金を稼ぐ道具に過ぎん。
道具に発言する権利があると思うなよ」
そこまで言うと、マネージャーは席につき打ち合わせを始めましょう、と元の口調に戻っていう。
私は新しく出来た痣を恨めしく見つめながら、大人しく席につくのだった。
66人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:聖泉りか | 作成日時:2015年2月9日 2時