#14 ページ15
カエデちゃんと渚君と別れてからの電車の中。
私と業は駅にとまるたびに増えていく人の数に困っていた。
「んーーっ、キツイ」
「我慢してよ、俺もキツイし」
もう、本当におしくらまんじゅう状態だ。
更に私は軽い潔癖性なため、どうしても手すりを掴めなかった。
追い打ちをかけるように電車に酔い、今の気分は最悪と言っていい程。
「ホント何やってんの?」
業に呆れられても、言い返す気力すら無い。
けれど、一度深く溜息をつかれたと思ったら、急に息がしやすくなった。
不思議に思って顔を上げてみると、そこにあったのは業の顔。
どうやら、私の周りに空間を作ってくれたようだ。
「いいよ、それ、業疲れちゃうし……」
「死にそうな顔して何言い出す訳。
だいたい、こんなんで疲れてたらあのタコ殺せないじゃん」
「ちょっと、人いっぱいいるのに殺すとか物騒な単語やめてよ……。
でも、ありがとう」
だんだん恥ずかしくなって、業の袖をキュッと握る。
頭上でふっと笑った様な気がして、またかと思う。
一々面倒臭いし、腹たつけど、やっぱり私はこの男の事が好きなんだと実感した。
願わくば、この想いがバレてしまわないように。
小さく、心の中で祈った。
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作者名:聖泉りか | 作成日時:2015年2月9日 2時