#10 ページ11
「ねえ、業。
さっきは何があったの?」
私はロッカーから出て、今度は目を見て聞く。
「んー、雪乃には内緒かな?」
「何それ……」
詳しく問いただそうかとも思ったが、これ以上はいくら聞いても答えてはくれないだろう。
ほっぺを膨らますと、業はそれを見て笑ってくる。
「もー、何笑ってんの?」
「拗ね方も変わんないんだなって思っただけだよ」
そう言った業の顔は、昔とは変わった優しい笑顔で。
今まで変わらない所を見てきただけだったからか、拗ねて無いし、なんていう簡単な言葉すら出てこなかった。
もう何年もたっているんだってことを今更ながらに実感する。
私よりも大きくて、骨ばった手。
頭1つ分位差のある身長。
なんだか見ていて安心する背中。
確かに変わらない部分も多いけど、それだけ変わってる部分も多いんだ。
特に私は、変わった所ばかりだ。
まだ、業が気付いていないだけで………。
「それで?業はなんで私をここに連れてきたわけ?」
「聞きたいことがあったから?」
「何で疑問形なの……」
聞きたいことなんて、別に今じゃなくてもいいのに。
「それって、授業サボるほどの事なんでしょうね?」
呆れたように笑った私に、業は低い声で言う。
「桐谷って」
ドクンッと、大きく心臓がなる。
「どういうこと?」
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作者名:聖泉りか | 作成日時:2015年2月9日 2時