かき氷のシロップが少し足りない (ページ16)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:20,701 hit

ズルい願いページ16

渡辺「…っ、はぁ、」

『ねぇ、やっぱ重いでしょ？』

渡辺「っ、重くねーよ。」

『あたしゆっくりだけど歩くし…。』

渡辺「あと5段だろ。」

『ごめん。』

渡辺「ごめんごめん言い過ぎ。

次ごめんって言ったら怒る。」

『…わかった。』

ほんとに情けない。

足捻挫して幼なじみにおんぶしてもらいながら階段登って。

しかも打ち上げ花火みるために。

私はほんとになにがしたいんだろう。

渡辺「ここでいっか…。」

神社の境内にある石段に降ろされる。

ここは結構人が少ない。

『ありがとう。』

渡辺「だからいいってさ(笑)」

くしゃくしゃって頭を撫でられる。

『もー髪の毛崩れるー！』

「まもなくー、花火が上がります。」

ドカンと大きな花火が上がる。

『わぁ、キレい。』

きっと階段の下からではほとんど見れなかったと思う。

渡辺「これ周年しかやらねぇのもったいないよな？」

『けどさあ、この夏は一度きりって感じで

私はいいなぁ…』

渡辺「来年は別のとこ花火大会行こうなー。」

『それって…。』

ふと、翔太に目線を移したけど…

あれ、翔太ってこんなにかっこよかったっけ？

夏の魔物のせいかも、なんて。

そんなのは冗談。だって私…

渡辺「ん？」

『…なんでもない。』

誰と花火大会行くの？なんて聞ける勇気はなかった。

…この時間が少しでも長く続きますように。

そんなズルい願いを打ち上げ花火に馳せた。