好きなんです！ 【反応集】【短編集】

あなたで満ちて ページ9

＊善逸くん視点

.♡⃛


——コンコン。遠慮がちに叩かれたノックの音で、目が覚めた。こんな夜中に俺を尋ねてくる人といえば。

｢善逸、起きてる……？｣

やはり、Aちゃんだった。
今まで寝ていたのがバレないように、そっとベッドを降りてドアを開けた。

｢こんな時間にどうしたのっ……！？ えっ、Aちゃん！？｣
｢少しだけ、このままがいい……｣

ドアを開けた瞬間、俺に抱きついてきた。滅多に甘えてきてくれないし、かわいいな、なんて思ったけれど、耳を澄ませたらすごく怯えた音がした。

｢何か、あった？｣

うっすら涙の跡もあるし、少しだけ震えていたから、優しく抱き返して頭を撫でた。

｢……怖い夢、見ちゃった｣
｢怖い夢？｣
｢善逸が、鬼になっちゃう夢｣

その時は何も言えなくて、少しだけ強く抱きしめた。

｢いなくならないで｣
｢Aちゃんからは離れられないよ｣

これは、本心。絶対なんてないし、鬼にならないだなんて言えないけど、Aちゃんからは離れたくないのは本音。

｢とりあえず、部屋入ろう？｣
｢うん。ありがとう｣

少しでも、一緒にいられるように。

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