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「ありがとうね、もう結構経つのに……」
もう結構経つ。
その基点となる出来事は紫耀の死であり、俺の生が延長されたそのときであった。
玄関を上がって家の奥に通してもらって、
仏壇の上で笑う最後に会ったときよりすこしだけ幼い紫耀にお線香をあげて、手を合わせた。
「いえ……実は、今日はお礼を言いに来たんです」
そう言うと、彼女は目を丸くした。その驚いた表情が、昔見た紫耀のそれと重なる。
「お礼？……紫耀に？」
「紫耀くんと、お母さまに」
「え、……私？」
「……11年前に紫耀くんの心臓を提供していただいたおかげで、こうして生きられてるから」
「もしかして、……廉くん？」
彼女の口から、自分の名前が出てきたことにすこしの驚きと罪悪感を覚えた。
彼女の11年前の選択が、息子の心臓を「誰か」に提供するか、ではなくて
俺、という特定の個人に提供するか、というものであったことが分かったからだ。
「僕のこと、紫耀から聞いてはったんですか？」
「もちろん。『友達出来た〜！』言うて、楽しそうにしててなぁ……。
何やら、臓器提供のカード？みたいなの欲しい言うてたけど、
あれって小学生はまだ登録できんのでしょう？
……せやから、あの子がアホな事故やって脳死や言われたときに
廉くんのこと思い出してな。たぶん、紫耀やったらそうしたいと思うやろって思ったんよ」
「ホンマに……ありがとうございます。紫耀くんの大切な心臓、やのに……」
「こちらこそ、ありがとうね。アホな子やったけど、こうしてすこしでも
ひとさまのお役に立ってると思うと、私も嬉しいわ……。
……なぁ、廉くん。嫌やったら無理せんでええんやけど、1回だけハグさしてもろてもええ？」
紫耀のお母さんの瞳は、涙でうるんでいた。
「もちろん」
そう言って、彼女の背中に腕を伸ばした。
その感触が、どうしようもないほど懐かしくて、胸が締め付けられるような気持ちになる。
…………ママ、長生きしてね。
彼女の肩に顔をのせたとき、心の中におる紫耀がそう呟いた。
「長生きしてくださいね」
紫耀の気持ちが、俺の声帯を通じて、空気を揺らした。
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夜木(プロフ) - いむさん» ご丁寧にありがとうございますw一気読みお疲れさまでした！珍しくあまりボケずに書いたので気に入って頂けて良かったです( ;∀;)(by生きてる紫耀くんメインが完結しない平野担) (2020年11月17日 22時) (
レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
いむ(プロフ) - 夜分遅くに失礼致します。一気読みして大号泣しました。物語でこんなに泣いたのは初めてだと思います。それくらい、心に響く作品でした。ありがとうございました！ (2020年11月17日 2時) (レス) id: 1eeed365fd (このIDを非表示/違反報告)
夜木(プロフ) - れおさん» れおさん、コメントありがとうございます。とても嬉しいです！！！ (2020年6月13日 13時) (レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
れお(プロフ) - コメント失礼します。めちゃ涙腺崩壊でした。紫耀くんが優しさの塊で…切なさもありつつ、感動もあって最高でした！！何回も読み直してます笑 (2020年6月13日 9時) (レス) id: ad2f82eb65 (このIDを非表示/違反報告)
夜木(プロフ) - HARUさん» HARUさん、ありがとうございます！コメントとても嬉しいです！途中かなり放置してしまったのに最後までお付き合いいただき幸甚の至りでございます。笑 HARUさんのヤンデレ海ちゃん、楽しみにしております！無理なさらず頑張ってください(*^^*) (2020年5月27日 12時) (レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜木 | 作成日時：2020年4月1日 1時
