味気ない ページ2
*
最悪なあの日から、すでに2週間経ってもなお、
彼女が頭から離れることがない。
「涙ひとつ流さないのね」
最後に彼女が呟いたひと言がいまだに頭に渦巻いて、
離れない。
まるで呪いかのようだ。
それなのに、あれから毎日枕を濡らすのはどういう皮肉なのだろう。
生憎、涙をコントロールする能力はなかったもんでね。
そんでもって、コントロールなんてする余裕もなかったよ。
「女を忘れたい時は、新しい女で忘れるんだ」
そんな、冗談めいた友だちのアイディアで、
何人かの女の人を紹介して貰った俺は、
いつもの俺じゃないみたいだった。
それはなぜだか、
申し訳ないと思いつつも、彼女の面影がちらついて、居心地が悪くなるからで、
一緒にご飯を食べたあとにホテルへ行くことも無く、
タクシーで帰らせ、俺はひとり歩いて家へと帰る。
それがお決まりだった。
だから今日も、夜空がこんなにも空っぽで味気ないと感じながら、
ぼーっと、ただ、ぼーっと、
帰り道を自分の頭をパンクさせながら歩いていた。
カーンカーンカーンなんて、ほんとは大きい音が鳴っていた。
でもそれが、
列車が通る合図である事なんて、
頭から抜け落ちてたかもしれない。
「死ぬつもりなの?」
「え?」
呼び止められた目の前に、
列車が俺のことなんてお構いなしに、
風を切っていた。
*
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:坊ちゃん | 作成日時:2020年2月15日 0時