スキになったら負け！2【Hirano.S】 (ページ3)

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長い沈黙

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私が何も言えなくなっている間にも

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紫耀くんは頭を下げ続けていて

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こんな人に頭を下げさせてる私ってなんなんだ…って
思うけど

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まっすぐすぎる彼の気持ちを
無下になんて出来なくて

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「あの…」

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とまどいながら何とか声に出すと
顔を上げた紫耀くんは
なんとも言えない困った顔をしていて

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「…私なんかでいいの？」

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勝手に震える指先を
ぎゅっと握りしめて彼を見ると

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「Aさんがいーの。」

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張り詰めていた空気が一気に和らいだ感じがして

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「私なんかでよければ、よろしくお願いします…」

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夢みたいにふわふわした気分のまま
そう答えれば

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「まじ…」

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紫耀くんはまんまるな瞳を
うるうると湿らせて

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「…やばい、嬉しすぎるんだけどっ」

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次の瞬間には
また弾けんばかりの笑顔を浮かべた。

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「よろしくお願いします…」

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嬉しいんだけど、

それはもうとってもとっても嬉しいんだけど、

まだ実感の湧かない私に

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「今からお互い敬語はやめよ！あと、いっつも俺からお誘いしてたけどAさんからもいっぱい連絡ちょーだいね？」

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紫耀くんはしっぽを振ってる犬みたいにキラキラした眼差しでいろいろとルールを取り付けて

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そして

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「で、帰る前にぎゅーしてもいい？」

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期待いっぱいの目で私を見た。

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何度ドライブに行ったって

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お互い触れたのは冗談で肩を叩いたり

何かを渡す拍子だったりって

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「うん、、」

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「えへへ、わーい！」

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こんなに密着したことなんてなかったから

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想像より遥かに分厚い胸板も

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こんなに体温が高いことも

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今初めて知って

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「Aさんやっぱ華奢やね」

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「やっぱって？笑」

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「ほら、前に酔っ払って倒れてきたときがあったでしょ？あの時冬のコート着てたのにすごい細かった気がした」

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そういえばそんなことがあったなんて

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「なんか恥ずかしいな…」

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彼の胸の中で思い出すことになるなんて

思いもしなかったな。