スキになったら負け！2【Hirano.S】 (ページ13)

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episode58 ページ13

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今日は紫耀くんが帰ってくる日。

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いつもと変わらず帰宅時間を教えてくれるLINEが届いて

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なんだかんだそれに合わせて食事の支度をしてる私。

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パスタソースと、グリル野菜の下ごしらえができたところで

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「ただいまぁ」

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玄関から紫耀くんの声

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その声に、

あれだけ悩んだくせに
条件反射みたいに玄関に向かう自分の足

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「なんかいいにおいしてるね」

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私のお出迎えに嬉しそうに目を細めて

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当たり前のように
抱き寄せてくる。

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「おるすばん寂しかった？」

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元気がないのだってお見通しで

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「…さみしかった」

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「俺もさみしかったよ？」

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私が喜ぶことばを知ってる。

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だけど今日は素直になりきれなくて

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「…Aさん？」

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いつもより短めにその腕からすり抜ける。

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不思議そうな顔の紫耀くんが
視界の端に映っていたけど

「パスタつくってるの、茹で始めちゃうね」

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敢えて振り返らずにキッチンに戻る。

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自分が勝手に落ち込んでるくせに
紫耀くんにこんな態度とって最悪だ…

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自分の行動ひとつひとつに瞬時に後悔して、本当に何してるんだろ。

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「Aさんどしたの？俺なんかしちゃった？」

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続いてキッチンに入ってきた紫耀くんが悲しそうな顔で私に問いかける。

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そうじゃない、ってぶんぶんと首を横に振ったら

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「じゃあどうしたの？なにがAさんをそんな悲しい顔にしてるの？」

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私が悲しい顔にさせてる紫耀くんがそう言って
沸騰してしまったお鍋の火をカチンと消した。

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「おしえて？」

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俯く私の顔を覗き込んで
手に持っていたパスタボトルを取り上げる。

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「女の子…」

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「女の子？」

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歳上の彼女にこんなことで嫉妬してるって言われたら引くかな？

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そう思ったけど

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「…女の子、仲良さそうだったから…。ちょっと心配した…というか…」

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私が言うと
なぜか紫耀くんは嬉しそうな顔をして

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それから、

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「え！？はじめて？！やね！！」

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今度は何やら興奮した様子で

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「…はじめて？」

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いつのまにか私の方がポカン。

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そんな私の肩に手を置いた紫耀くんが

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「はじめてAさんがこんなに大きなヤキモチやいてくれた！！！」

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そういってもう一度私を抱き寄せた。