33 ページ33
・
「おつかれさまでしたー！！」
無理を言って早く仕事を上がらせてもらい佐久間が待つ場所へ向かう。
着替えてる間に逃げたりしてない？
と思って慌てて外に出たら取り越し苦労だった。
佐久間はヘラヘラとしながら手を振ってきた。
「おつかれさま」
「ほんと疲れた」
佐久間と会っていた、私たちにとってはあそこしか思い入れのない公園に向かう。
「毎日来てたんだよ」
「ごめんね」
「……謝ってすむか、バカ」
「うん、ごめん」
今日はいつになく大人びて見える(大人だけど)。
紺のスーツに革靴で、その上にコートなんて羽織って。
こっちの佐久間は私が知らない方の佐久間だ。
「寒くない？ どっか行く？」
「ここでいい」
「じゃあ少し待ってて、飲み物買ってくるから」
公園のベンチに腰掛けたら佐久間がどこかへ行こうとするから咄嗟に掴んだコート。
その手にそっと触れた佐久間は、空いてる方の手で私の髪を撫でた。
「大丈夫だって、ほらそこの自販機だから」
「……わかった」
なあんだ。恥ずかしいな。
二人分のおしるこを買ってきた佐久間。
「なんでおしるこ？」
「だって佐久間コーヒーとか飲めないでやんすよ」
「お子ちゃまだね」
「うっさい」
いつぶりだろう。
こうして佐久間と肩を並べているのは。
「ねえ、ほんとにしちゃうの、結婚？」
「……しちゃうね。寂しい？」
ほんとムカつく。
分かってて言ってるんだろうし、それに対してすぐに反応してしまう自分も嫌。
コートから見える佐久間の赤くなった手に触れる。
触れるだげなんて物足りなくて、ギュッてしちゃう。
「A？」
「やだ。佐久間、居なくなっちゃやだ」
「……」
「好きなの、好き、なんだよ」
お坊ちゃまとお嬢さまの事情なんて、一般人の私になんて分からないから。
だけど唯一分かるのは、この気持ちを忘れることなんて出来ないってことだけ。
「ほんとに、佐久間が好き。佐久間がね、踊ってるのを見るのが好き、佐久間がね大好きな嫁の話を聞いてる時間が好き、佐久間がね私の作った冷めた唐揚げを美味い美味いった頬いっぱいにして食べてくれるのが好きっ」
私が知る佐久間なんてほんの少しだけど、それでも好きの大きさは誰にも負けない自信がある。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2031人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - ゆんさん» ゆん様、こちらにもコメント有難うございます！とっても嬉しいです(^-^)私が好きな彼を妄想して書かせてもらってますので、それで気に入って下さると本当に嬉しいです！おまげで、しっかり読んでもらえて幸せです☆有難うございました(o^-^) (2021年4月16日 21時) (
レス) id: 4eb798e005 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - 続けてコメント失礼します...！作者様が作り出す桃さんが本当に素敵で、読んでいてずっと胸がぎゅっとなってました。ハラハラもしましたが、最後ちゃんと幸せを掴めて良かったです（；＿；）あと最後のおまけでまた泣きました（笑） (2021年4月16日 21時) (レス) id: 9b672a5393 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - せいなさん» せいな様、その初めてを私に下さり有難うございます！嬉しいです！泣いてくださるほど感情に入り込めた事更に嬉しい。こちらこそ見つけて下さり、そして読んで下さり、コメント下さり有難うございました(^^) (2021年4月8日 8時) (レス) id: 4af061861f (このIDを非表示/違反報告)
せいな(プロフ) - 初めまして。感想なんてはじめて書きます。笑こんなに泣いた小説ははじめてでした。すっごい感動しました。素敵な作品を作っていただき、ありがとうございます。この作品大好きです。 (2021年4月8日 0時) (レス) id: 6e9aa29fb4 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - 雪の王子様さん» こちらにも有難うございます！お付き合いしてると錯覚してもらえるなんて、凄い褒め言葉です！嬉しい（泣）素敵なコメントほんとに有難うございました！ (2020年10月7日 13時) (レス) id: e8f02d2b5a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：☆ゆきんこ☆
| 作成日時：2020年9月11日 12時
