324：甘くてズルイ人 ページ31
バロから少し遅れて部屋を出た私は
「普通に…普通に…」と呪文の様にブツブツとつぶやきながら廊下を歩いた
｢普通にって…案外難しいな…」
普通にしようって考えれば考えるほど、バロとの普通がどんなだったか分からなくなる…
「あーもうっ、嫌になるな…」
地団駄を踏む様にそう言い放った私の後ろで
“「Aちゃん」”と呼ぶ声がして立ち止まり振り返った私
「ジ、ジニョンさん…」
振り向いた先に居たのは満面の笑みで駆け寄って来るジニョンさんで、
その瞬間なぜか私の体は意味も無く凍り付いた
JN「Aちゃんの後ろ姿が見えて
追いかけてきちゃった」
「そ、そうなんですか…」
普通に普通にって思えば思うほど笑顔が硬くてぎこちなくなるのが自分でも分かる…
でもこのままじゃ駄目だ…ちゃんと切り替えなきゃ
JN「Aちゃん今日の約束覚えてる?」
「えっ?」
JN「もしかして忘れちゃった?」
「…あっ、きょ、今日ですよね!!
もちろん覚えてますよ、
ちゃんと部屋も片付けました」
突然の問いかけに一瞬頭が真っ白になってしまったけど、
私は必死にジニョンさんとの約束を思い出した。
前に家に遊びに行きたいと言われ何時かと約束し、今日がその約束の日…
ジニョンさんが初めて私の家に遊びに来る日だ。
1人暮らしを始めてから男の人が家に入るのは初めてだから
凄く緊張して色んな事を考えながら部屋を掃除したけど、
今思えば半分以上はバロとの事で頭がいっぱいだったような気もする…
JN「凄く楽しみだな」
「そ、そんな大した事ないですよ
楽しみにする様な部屋じゃ…」
JN「どんな部屋かなんて関係ないよ、
Aちゃんの部屋だから楽しみなんだ」
甘い声と甘い笑顔でそんな事を言われるとさっきまでのモヤモヤはどこかへ行って、
いつの間にか頭の中はジニョンさんで一杯になってしまう。
そんな単純な自分が、たまに嫌になってしまう事もあるけど…
「なんか…ジニョンさんってズルいです…」
JN「えっ、どうして?」
「だって…いつも私をドキドキさせるから…」
JN「ははっ、そんな事言わないでよ、
抱きしめたくなっちゃうじゃん」
ほら…
「ズルい…」
そんな言葉にも私がドキドキするってジニョンさんは知ってて言ってる事くらい分かってるけど、
それでも…ドキドキしちゃうんだ…
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作者名：のん | 作成日時：2017年4月8日 21時
