178：ラクガキ ページ31
「…ソヌの嘘つき…」
新しいクラスになって約1ヵ月が過ぎた頃、
私は廊下側の窓を眺めながらふてくされた様にそう呟き机に頭を伏せた
「昼休みも会いに行くって言ったくせに…」
クラス替えがある前、違うクラスになっても昼休みに会いに行くって言ってくれたのに、
この1ヵ月の間でソヌが来てくれたのは片手でもあまるくらい…
むしろ我慢出来ずに私から会いに行ってる事の方が多いかもしれない
「嘘つきソヌめ…」
怒りと寂しさに震えながらため息交じりにそう吐いた所で
「A!!」と廊下から聞こえて来た声に、瞬時に反応を見せた私の脳
「ソヌ!?」
まるで“よし”と言われた犬の様に素早く立ち上がり、
目を輝かせて駆け寄る私を見て笑ってるソヌ。
ソヌの事考えてたら会えたって、もしかしたらただの偶然かもしれないけど、
私に会いに来てくれたって事だけで嬉しくて飛び跳ねそうになる
SN「よっ」
「ソヌどうしたの?
こっちに来るなんて珍しいね」
SN「まぁ、ちょっと…」
「…?」
SN「教科書貸してくんない」
「…へ?」
SN「だから、英語の教科書貸して欲しいんだよ。
俺のクラス次が英語なんだけど忘れてさ」
「あ、あぁ…教科書…」
私に会いに来たんじゃなくて教科書を借りに来ただけだと知り、分かりやすく肩を落とした私。
期待外れな訪問に少しふて腐れながら渡した教科書を「助かった」なんて言いながら受け取ると、
ソヌはそのまま自分のクラスへと戻って行ってしまった
「教科書借りに来ただけか…」
せっかくソヌと会えたっていうのに、目的は英語の教科書で…
「………英語…………やばっ!!」
ある事を思い出した私が「ちょっと待って!!」と追い掛けて引き止めると、驚いて立ち止まったソヌ
SN「ビックリした…なんだよ」
「ちょ、ちょっと貸して!!」
SN「は?」
「いいからっ!!ちょっと待ってて!!」
半ば強引に教科書を奪い返した私は、急いで教室の中に駆け込んだ
「危なっ…」
間一髪の所で思い出したのは、教科書に描いた恥ずかしい落書きの数々。
ソヌの名前ばかり書いてるのを見られてしまったら、死んでも死にきれない
「LOVEとかまで書いちゃってるし…」
私は冷や汗をかきながら消しゴムを握りしめ、
一枚一枚跡形もないように必死に落書きを消した
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作者名：のん | 作成日時：2016年9月4日 21時
