好きな人には他に好きな人が居ます 2 (ページ5)

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054：あの子への親切ページ5

-ソヌside-

SN「先出てるぞ」

着替え終わった俺はのんびり着替えてるジョンファンにそう言い残し先に部室を出た。
夏休みに入ってからはなぜか部活終わりに2人で帰るのが日課になっている毎日、
Aの事を思うと色々考えてしまう事はあるけど、ジョンファンはいい奴だし、
恋のせいで友情を疎かにするなんて俺の柄じゃない。
だから今日も一緒に帰ろうと部室の前でジョンファンを待っていると
体育館の入り口をウロウロしながら中を覗いているAが見えた。
実はこの姿…夏休みに入ってから何度か見た事がある。
たぶん…というか、確実にジョンファンを探してるんだと思うけど
一緒に帰りたいならそう言えばいいのに、どうして偶然を装うとしてるのかが俺には謎だ…

SN「相変わらずマヌケだな…」

俺が少しイラッとしてAの後姿を眺めながらそう呟いた瞬間
「おまたせっ!!」と勢いよく部室のドアを開けて出て来たジョンファン

JF「帰ろー」

SN「あぁ……ジョンファン、さっきそこに…」

ほんのちょっと、ものの数秒迷っただけなのに、
“そこにAが居た”と言いかけた時にはもう見えなくなっていたAの姿

JF「…さっきなに?」

SN「え、いや…なんでもない」

そう言って俺は校門までの道を歩き始めた。
たぶんAはまだ近くに居るんだろうけど、
別に伝えてくれって頼まれたわけでもないし、俺が気にする事じゃない。
そう思ってるくせになんだか妙に胸がモヤモヤして
たまらず俺が立ち止まると、ジョンファンも不思議そうに俺を見ながら立ち止まった

JF「ソヌ、どうした?」

SN「…悪い、俺先生に呼ばれてんだった。
　職員室寄って帰るから先帰ってて良いぞ」

JF「え、そっか…分かった」

「じゃあ先帰ってるよ」と手を振って背を向け歩き出すジョンファンを
「そういえばっ」なんて言葉で引き止めた俺

SN「さっきAも門の方に歩いてたぞ、
　追いかければ会えるんじゃねーの」

俺の言葉に一気に笑顔になって「分かった!!行ってみる!!」と
全速力で走って行くジョンファンの姿を見送った後、俺はすぐ近くにあった花壇の端に腰掛けた。
…先生に呼ばれてるなんて真っ赤な嘘。
Aが肩を落として帰る姿を思うとやっぱり放っておけなかったんだ

SN「もう少ししたら帰るか…」

携帯で時間を確認し、吐き出した大きなため息。
俺っていつからこんな親切になったっけ…

　