052：待ち人来たらず ページ3
「今休憩?」
SN「あぁ、休憩中」
「そっか。…で?何か用事?」
わざわざ家庭科室にまで来るから用があるのかと思って
私が窓際から離れ椅子に座りながらそう言うと、
「別に…用事じゃないけど」なんて返しながら私の隣の机に腰掛けたソヌ
SN「隣りに住んでんのに全然会ってなかったし」
「確かに、隣りでも会わないもんだね」
SN「だよな」
「え、なに?それでわざわざ
生存確認でもしに来たとか?」
SN「まぁ…そんなトコ」
ぶっきらぼうにそう答えたソヌに「ちゃんと生きてますよ〜」なんておどけて返すと、
「みたいだな」と呆れながらもソヌは笑ってる。
理由はどうあれ、ソヌがわざわざ会いに来てくれたのは嬉しかったけど
やっぱり私が気になるのはジョンファンの事…
「今日…ジョンファンは?」
SN「練習には来てるよ、
試合が近いからって張り切ってる」
「そっか…大変そうだもんね、バスケ部」
ジョンファンは一つの事に集中すると他が見えなくなるタイプだし、
そんなに大変じゃ私の事なんて忘れてても無理ないかって考えてる私の心を察知したのか、
「あいつAと会って話したいとか言ってた」なんて言ってくれたソヌ。
気を使ってくれたのは分かってるけど、それでもやっぱり嬉しいものだ
SN「ってか、それ何」
「これ?これはフェルト布地って言って
こういうのを作る為の材料」
手元にあるフェルト布地を指差して聞いてくるソヌに
前に作っていたウサギのマスコットを見せると、
「こんなの作れるなんてすげー!!」なんて、思いの外感動してくれるソヌ
「フッそんなに?これくらいなら簡単だよ」
SN「俺にも作ってくれよ、
鞄とかに付けれるやつ」
「うん、いいけど何がいい?」
SN「何って…それはAに任せる」
「よしっ分かった、任せといて。
ソヌにぴったりの作ってあげるから」
SN「おう、頼んだ。
…じゃあ俺そろそろ戻るわ」
ソヌは教室にある時計を見た後そう言って座っていた机から下り
「じゃあな」と手を振りながらあっという間に家庭科室を出て行ってしまった。
そしてもう見えなくなった背中に「じゃあね」と呟けば、また沈黙が広がる家庭科室。
「…ジョンファンは来ないのか…」
静かな教室では私の小さな声も響いて聞こえて、悲しさも増して思える。
どんなに待っても、本当に来て欲しい人はなかなか現れてくれないんだ…
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作者名：のん | 作成日時：2016年5月17日 21時
