068：海に沈んだ言葉 ページ19
目を閉じていても聞こえてくる波の音と微かに香る潮の匂いで
きっと海の近くを走ってるんだって分かった…
SN「着いたぞ」
錆び付いたブレーキ音と共にそう言って自転車を降りたソヌ。
目を開くとそこには夕日に染まる海と砂浜が広がっていて、
何も言わず黙々と波打ち際まで歩いて行くソヌに私も付いて行き、2人で眺めた沈みかけの夕日
SN「…海…来たかったんだろ」
「え?」
SN「朝、そう言ってたから」
「あ…うん」
私が行きたいって言ったからわざわざ連れて来てくれたのかなって、
夕日色に染まる海を眺めながら思っていると
「イ・ジョンファンのバカヤロー!!!」なんていきなり海に向かって叫び出したソヌ。
そんなあまりにも突然な出来事に私は驚いて、目を見開きながらソヌを眺めた
SN「ほらっAも言ってみろよ!!
スッキリするぞ」
「え…い、いいよ私は…」
SN「いいから」
「言ってみろって!!」と私の背中を押すソヌの勢いに負けて
戸惑いながら遠慮がちに「ジョンファンのバカー…」なんて声を出してみた私
「ジョ…ジョンファンの…」
SN「もっと大きな声で!!」
「ジョンファンの……
イ・ジョンファンのバカヤロー!!!!!」
SN「そうそう、その調子」
「私の気も知らないでーー!!!
酷いのはそっちなんだからーーー!!!」
私は海に向かって思いの丈をぶつけた
「先輩よりも私の方が
何百倍もいい女なんだからーー!!!」
全て言い終わる前からどんどんと溢れ出して止まらない涙
「私の方がっ…絶対っ…いいんだからっ…
…う"〜っ…っ」
腕で涙を拭いながら泣き続ける私を見守りながら優しく頭を撫でてくれるソヌ、
その温かい掌のおかげで、私はほんの少しだけ落ち着いた気がした
SN「少しはスッキリしたか」
「う"んっ…」
半べそかいて鼻を豪快にすする私を見て、ソヌはこれでもかってくらい笑ってる
「笑わないでよっ」
SN「いや、だってすげぇブサイクだからさ」
「ひどっ!!普通女の子にそんな事言うかな」
SN「悪い悪い、俺ウソつけない性格だから」
「もうっムカつく!!」
頬を膨らませながら怒る私を「はいはい」とあしらいながらまた頭に掌を乗せて…
…分かってる、これがソヌなりの励まし方、これがソヌの優しさなんだって。
だってほら、さっきまで流れていた涙は、知らない間にどこかへ行ってしまったから…
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作者名：のん | 作成日時：2016年5月17日 21時
