【放浪者】情けない私を大切にして (ページ8)

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情けなさ８up ページ8

「はい」

届けられた数枚の書類。特に見ないで捨てることが多いが今回も例に違わず暖炉行きらしい。

北国銀行(きたくにぎんこう)、執行官(しっこうかん)、愚人衆(ふぁでゅい)、

「……捨てちゃっていいんですか？？」

「うん、別に読む必要もないよ。勉強用にでも使ったらいい」

興味なさげな返答。

机の上に辞書を置いたかと思えば、そのままコーヒーを淹れ始めた。

「……『執行官(しっこうかん)』…の、………？……………！こ公子(こうし)様、が、……えと」

送られた報告書の一行目。

続く文字を思い出そうとするけど、何だったか、難しくはないはずなのに。

口ごもる私を見かねてかぎしりとソファが音を立てた。

「ふうん……で、公子が？」

コーヒーの苦い香りが鼻をくすぐる。

確かめるみたいに覗いてくるのはともかく、分からないことを理解した上で急かしてくる辺り性格良くない。

「璃月(りーゆえ)、に…………に、む？………？」

にむ、にむ、にんむ……任務？

「その、…執行官の公子様が璃月へ、にんむ、に向かったらし」

「！見せて」

ぐいっと肩に乗った重み。乗せられた顔は面白いおもちゃでも見つけたようだった。

「…ふ、はっ」

耳もとで響く嘲笑。

堪えきれない、そんな風な笑い声。ぴくぴくと口が震えているのが見て分かる。

「ははははは！！！女皇は本当にアレを送ったのか！？」

うるさっ。

何がそんなに面白いのか興味ないけどここで叫ぶのは切実にやめて欲しい。

耳の奥がキーってなる。

そんな私などいないかのように彼はバシバシと背もたれを叩き書類を見ては笑い、見てはまた叩く。

「軽くオススメしたとはいえ、まさか本当にあの馬鹿に任せるなんて！」

珍しく高揚している様子だ。

ありえない、そう笑う声が部屋に木霊する。

そんなにその公子様と仲が良くないのだろうか。自分よりもボロくそに言われる人は初めてで親近感が湧く。

「…………ウレシソウデスネ」

「なに、君こそ嬉しいんじゃないの？」

「え？いやだって、別に、知らない人ですし。何しようが特に何も思えませんよ」

見開かれた目はどこか、嬉しそうだった。