【放浪者】情けない私を大切にして (ページ7)

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情けなさ７up ページ7

咄嗟に抱えて部屋を出る。

苛烈な音。扉を挟んでも分かる、肩や心臓に重く伸し掛る圧に息が詰まってしかたない。

「……………………」

いや、それだけじゃない。

吹雪よりも冷たいこの人が、顔を顰め、不機嫌を隠さず静かに目を細め扉の隙間を見つめる、この空気。

手のひらに伝わる冷たい熱の存在が唯一の拠り所だ。戻りたい。

「………………」

「…………」

ばちばち

不安になる音に目をつむった。早く、早く終わって。

「…………あなたは」

轟音が地を揺らす。

少しの静寂と、その後に聞こえた鈴の音。

終わったのだと目を開く。グレー。視界いっぱいの、濃い灰色に困惑する。

「お前たちは、誰のものに手を出しているか分かっていないようだね？」

「…………随分と早く終わったようで」

上から。

離れて立っていたはずの彼女の声が、真上から聞こえていることに気付いて下がれば勢いよく背中から激突する。

見えたのはゆっくりと下がっていった手。

おそらく、自分に伸ばされていたもの。

どうしてとは思わないけど、何をされようとしていたのかも分からなくて目を伏せた。

「…………ほら、さっさとこっちにおいで」

バカ。自分に向けられていると気付いて顔を上げると、何やら意外そうな雰囲気。

自分じゃない、あの人に、彼に対しての。

「……そう」

自分より、少し高い程度の背。

隠れるみたいに後ろに回れば不思議と気持ちが落ち着ちついた。やっぱり、彼女のような大人の近くは落ち着けない。

「噂通り、随分と気に入っているんだな。情でも湧いたか」

「は、それに答える義務はないよ。それよりも、あっちで地面に埋まってる男でも助けてあげたらどうだい？」

「まさか、それこそ最も義務のない行動だ」

心底、と言いたげに横に振られた手。

これ以上長居するつもりはないらしく、スタスタ歩き去る後ろ姿に胸を撫で下ろす。

もう、出来れば会いませんように。

「……ねえ」

「はい？えおわッ！？」

冷たい感触、手首を掴まれ引かれた。

驚く私を横目に彼は腕を強く押し始める。突然の痛みから拍子に握りしめていた短剣を落としてしまう。

「…………ふん、意図を読めていたことは褒めてあげる。だけど危機感はもっと持った方がいいよ、君のように守られなければ死んでしまう子は特に」