part207 ページ16
「あなたたちが生まれて
本当に嬉しかったわ。
けれど、生まれた場所は
簡単にできた洞窟。
魔物たちにバレるのは時間の問題だったの。」
外から聞こえる魔物のおぞましい声と
愛する人と産んだ可愛い赤子たち。
恐怖と幸せに板挟みされ2人はどんな思いだったのか。
それはアルバやアルヴァスには
わからないことだけれど
…けれど、自分たちが生まれて嬉しかったことは、誰にも塗り替えられない事実なのだろう。
「お母さん……」
「……大丈夫よ。」
「……話を戻そう。
私たちはその洞窟から魔物に追われながらも
暗黒神が封じられた杖があるという
トロデーン城と
太陽の鏡があるというサザンビーク城付近へ
生まれて間もないお前たちを置き去りにした。
……このことについては
本当に悪いと思っている。
本当に申し訳ない。」
フィオーネとラルクはそれぞれ頭を下げ
娘と息子に謝罪の意を示す。
アルバとアルヴァスは
悲しげに顔を歪ませるも
自身の両親に抱きついた。
全ては自分たちを守るために
身を呈してくれた両親への感謝を伝えるために。
「アルバ…？」
「もう、いいの。
お母さんの気持ち、
ちゃんと受け取ったから…！
ありがとう……
お母さんのおかげでトロデーン城の人たちに会えて救われたから……。
そこに、お母さんたちがいないのは
寂しいことだけれど……
こうして会えたから、いいの。」
「アルヴァス……」
「………。
例え、王族に好かれなくても
俺には姉さんが、エイトたちが…
孤児院の子たちがいる。
それだけでとっても幸せなんだ。
あとは、暗黒神を倒して
世界を平穏にする。
そうすれば本当の幸せがくるんだ。」
2人は、逞しくなった自身の子を見て
自然と涙を溜め愛しい子供を抱きしめた。
「あなたたちなら、きっとやれるわ。
けれど、あなたたちには知らなければならないことがたくさんある。」
「知らなくてはいけないこと？
それって一体……」
「あの少年…エイトくんのことだ。」
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