十五話 ページ43
「____おれは、
“僕”は役者だ!
自分ではないものになり、
存在しない人生を立ち上げ、
“人間とはなにか”を、
さらけ出してみせるのが僕の仕事だ!
主役だろうが端役だろうが、
悪役だろうが善人役だろうが関係ない、
僕はそこに人間の生を立ち上げる、
僕には他の仕事なんてありえない、
そういう生き方しかできない!」
彼から発せられた声は、心からの言葉は、
観客たちに向けていた。
「生き方を演じる以上、避けられないものがある。
それが死だ!
死は生の逆ではなく、
生のシンボルであり旗印だからだ。
しかし死には矛盾がある。
だから僕にとって究極の仕事は、
人が死ぬことを演じることだった。
装置としての死や約束事としての死ではなく、
本物の死を演じること、それを観客に伝えること。
それが僕にとって“演劇を極める”ということだった。
その結果がこれだ。
見ていただけたか?
死は常に僕たちの頭上にある!
声もなく静かに、僕たちがそちらに行くのを待っている!
演劇や映像物語は必死にそれを表現する。
構成や編集や音楽や気の利いた台詞を使って、
だが決して死そのものは描けない!
僕が死を演じた最初の役者だ!
それをあなたに、
今日ここに来てくれた皆さんに観て貰いたかった!」
青年の動機は観客たちの言葉を失くさせた。
驚きからか、恐怖からか…それは人それぞれだが、
周りを巻き込み、色々な人を動かせた青年と共犯者である脚本家は逮捕される事は決定だ。
「後悔はない。
これが僕の生き方だ。
役者はどこでだってできる。
命が終わるその時まで、僕は今日の成果を糧に、
誰かの心を演じ続ける」
その言葉を静かに聞いていた虚子は、何も言わず、
その場から静かに立ち去った。
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スート(プロフ) - セレーナさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけると嬉しい限りです!もうちょっと増やせるように頑張りますが…恐らく次回になりそうです… (2019年12月23日 9時) (レス) id: 1c1bb3d8a6 (このIDを非表示/違反報告)
セレーナ - 面白い作品ね。だから碧ちゃんと太宰さんとの絡みをもう少し増やしてほしいわ (2019年12月23日 1時) (レス) id: c6e49e4b0b (このIDを非表示/違反報告)
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