十三章 ページ41
“天使はいる”
その言葉に観客がざわついた。
だがそのざわつきを抑える様に、
乱歩は“ただし”と言葉を続けた。
「その証拠に、事前に劇場に送りつけられていた予告状には、“天使が演者を殺すだろう”とはっきり予言されていた。
明らかにこの事件は劇中の“天使”の存在を前提にして
組み立てられている」
“予告状の事は公開されていない”から、
観客席が別の意味で騒めく。
だが乱歩はそれを気にする事なく話を続けた。
「ただし天使とは
君たちが思い描いているような奴じゃない。
演劇で云ってただろう、天使は登場人物たちから見えない不可視の存在。
それでいて登場人物の挙動は
すべて天使の視界のうちだ。
つまり観客のことだよ。
観客は事件のほぼすべてを知っているけれど、
決して舞台上の人物に手を下すことはない。
それがこの劇における
だから天使は加害者ではありえない。
どちらかといえば天使は……被害者だ。」
『この劇と事件は深い所で繋がっている』
乱歩はそう云った。
天から堕ちた天使が天に戻ろうとする。
それを裁きの天使が阻止しようとする。
一方で天使の裁きは見せ掛けで、
被害者であるはずの人間が裁きを詐称する。
天使と人間が逆転し、
裁くものと裁かれるものが逆転する。
「観客が解決を待ち望んでいるよ？
犯人がいなければ殺人事件は完結しない。
完結しない事件など二流もいいところだ！」
全てが逆転する……という事は、
被害者である者は“加害者”となる。
つまりは_____
「姿を現せ、堕天せしもの！
この神の御子が命じる！
誰かさんの目は誤魔化せても、
この僕の目は誤魔化せないぞ！
これが解決編だ、もうこれ以外の終わりはない！
天と御子と、そして無辜なる大衆の前に真実を晒せ！」
…………………………
一時の静寂。
その静寂は別の…第三者の声により破られた。
「これが結末か……素晴らしい！」
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スート(プロフ) - セレーナさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけると嬉しい限りです！もうちょっと増やせるように頑張りますが…恐らく次回になりそうです… (2019年12月23日 9時) (
レス) id: 1c1bb3d8a6 (このIDを非表示/違反報告)
セレーナ - 面白い作品ね。だから碧ちゃんと太宰さんとの絡みをもう少し増やしてほしいわ (2019年12月23日 1時) (レス) id: c6e49e4b0b (このIDを非表示/違反報告)
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