176話 ページ37
(伏黒視点)
あの人と別れてから、引き付けるようにして一体を祓い終えて残り一体となった。
「“鵺”!!」
正面から向かってくる呪霊に、影から現れた鵺がぶつかった。
鵺の帯電した呪力によって麻痺した呪霊にすかさず攻撃を加える。
俺が蹴り上げた呪霊は大きく上を向き、首と思われるところを玉犬が噛みちぎった。
「…ふぅ」
このレベルならば準二級もないだろう。
祓除を終えた後は鵺だけ影に戻し、玉犬二体を連れたままあの人が向かったトンネルの先へ歩を進める。
特級の心配をする必要は無いが、未だ感じるこの血腥い匂いが気になる。
トンネルを走って抜けた先には、予想通りの光景が広がっていた。
ひどい匂いに眉を寄せ、鼻と口を手で覆う。
「…Aさん?」
姿が見当たらないあの人に、少しだけ不安がよぎる。
が、すぐに玉犬が木の陰に隠れていたAさんを見つけた。
後ろからでよく見えないが、地面に膝をついてなにかを抱えているようだ。
それをじっと見ていて、二メートルほどの距離まで近付いても俺に気が付かない。
「こっちは終わりましたよ」
少し声を張って呼びかけた。
「…あぁ、そっか。お疲れ」
Aさんはパッと顔を上げ、そう言って笑みを浮かべた。
しかしその顔は到底任務を終えた後とは思えない、怒りか悲しみか、はたまた真逆の感情が抜け落ちたかとも思うような表情だった。
「怪我もなさそうだね〜
私はこの辺に散らばった人間の体を片付けてたとこ。終わらせちゃうから待っててくれる?」
無理をしている。
笑顔で明るく振る舞って、それは表面だけを取り繕って本当の気持ちを覆い隠す。
こうやって壊れていく呪術師は結構いるらしい。
この人は、呪術師じゃないけれど。
「それ、知り合いですか」
一時的に死体置き場となっている横道に置きに行こうとしていたものを指す。
それは首の根元で断ち切られた、女性の頭。
Aさんは俺に背を向けたまま立ち止まり、再び自身が抱えている頭を見下ろした。
そのまま体は動かさず、ぽつぽつと語り始めた。
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翡翠(プロフ) - ぽんちょ。さん» コメントありがとうございますm(_ _)mそうです!!まんまその二人をイメージしていただければと思います!w (2022年4月8日 1時) (レス) @page50 id: 5d748230e5 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんちょ。(プロフ) - 空と蛍ってまさか原神ですか?www(全然違ったらごめんなさい!) (2022年4月7日 15時) (レス) @page21 id: e374329c1d (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 向月葵さん» コメントありがとうございますm(_ _)m誰かに伝わればいいなと思いながらネタを混ぜているので嬉しいです!w (2022年3月21日 23時) (レス) id: 5d748230e5 (このIDを非表示/違反報告)
向月葵(プロフ) - ストーリーの構成とか、原作との混ぜ方とかが全く違和感なくていつも楽しく読ませていただいてます。七不思議2番は少し笑っちゃいましたw (2022年3月20日 23時) (レス) @page40 id: b81c3ee352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2022年3月3日 21時