131話 ページ38
「怪我してないか? 治すよ」
手をワキワキさせてナナミンの周りをぐるぐる回る。
曽良くんみたいな平手打ちをされたのでやめた。
反転術式は家入さんの専売特許だが、この状況じゃ全員にまで手が回るはずがない。
様子を見るに重傷者が順番に運ばれているようだが、多少の怪我程度だと今は放置になってしまうだろう。家入さんやお医者さんが過労で倒れてしまう。
「私はかすり傷程度なので問題ありません。治療しにここへ来たのならもっと重傷の方にお願いします」
「え〜そういうわけじゃないんだけどな」
ただ好奇心で百鬼夜行後の新宿京都を見に来ただけの野次馬。呪術師を治療しようなんて思っていなかった。
最初からそのつもりだったし、知らない呪術師を助ける気もないし。そういうとこドライだって言われるんだろうな。
分かってはいてもどうも知らない人のために頑張る気が起きない。
「ではウロチョロしないでください。邪魔です」
「否定できないけど辛辣すぎん?」
ナナミンの言うとおり、大抵の術師は私を怖がるからここにいるとただただ邪魔になるだけだ。
でもそれ治療して回るのも一緒じゃね?
私が「治療するぜ〜」と言って近付いたらおもくそ悲鳴をあげて逃げて怪我が悪化する呪術師の図、容易に想像できる。
「となると私は早くここを去ったほうがいいわけか……
…ん? ああ、そっかそうだよな」
一瞬ナナミンから目を離したとき、私の後ろを凝視する灰原くんに気が付いた。
私の後ろには夏油。
つまり、そういうことだ。
「霊同士は認識できるのか」
ナナミンは何もないところを見る私に訝しげな目を向けたが、私が呟いた言葉で察したように眉を動かした。
「…まさか、いるんですか? もう一人」
私の後ろに目を向けた。
直接見えているわけではないので夏油がいる位置とは少し視線がずれているが。
「あ〜…………………いる」
言っていいのか迷って間が空く。
闇堕ち先輩の幽霊と再会する気分は良いものじゃないだろうから。
「違っていたら申し訳ないのですが、このタイミングで霊が増えるということは……」
一瞬眉間に皺が寄る。
フゥ、と息を吐いて、少し間を置いて口を開いた。
「……夏油さん、ですか?」
夏油が、「へぇ、よく分かったね」と小声で言う。
「『へぇ、よく分かったね』だって」
「…そうですか」
「…A、そのまま伝えなくてもいいじゃないか…」
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翡翠(プロフ) - とぅにさん» なんのことかと一瞬考えましたが吉田ですねwwちょくちょく別作品キャラおります。 (7月3日 2時) (レス) @page22 id: 5d748230e5 (このIDを非表示/違反報告)
とぅに(プロフ) - ヒロフミくん出てきてびっくりしました☺️☺️ (7月2日 23時) (レス) @page21 id: 76d074d926 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 水泳進化人さん» コメントありがとうございますm(_ _)m返信遅れて申し訳ないです。自分が読みたかった話を書いて、好きだと伝えてくださる方が多く、私と同じ方が他にもいたんだなととても嬉しく思います…!! (2022年3月3日 20時) (レス) id: 5d748230e5 (このIDを非表示/違反報告)
水泳進化人(プロフ) - 好きです。 (2022年2月25日 14時) (レス) @page40 id: 30ca69ad2f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 雪さん» コメントありがとうございますm(_ _)mとても嬉しいです! (2022年2月7日 22時) (レス) id: 5d748230e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2022年2月3日 2時