【嗜好・興味：呪霊】.3 (ページ50)

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「そんなもの残しているから…」
「だから俺は言ったんだ！！」
「かといってまだ幼い…！」
「今更年齢が関係あるというのか！？」

「早く切り落としてしまえ！！！」

＿＿＿

「……ッ！！」

薄暗い部屋で飛び起きる。

冷たい床。
光の差さない閉じられた空間。

「またか…」

三那人は、齢十三になる。

この部屋に放り込まれるのは何度目だろうか。

「何度落としても意味がないというのに」

無くなった左腕を見てため息をつく。

外から、足音が聞こえた。

「三那人！！」

「……またあの老人達が」

両親と、その護衛だった。

華御家には分家が多い。
同じ家系と言えど、思想は人の数だけ存在する。

当然、三那人の左腕を疎ましく思う者も多かった。

そのほとんどが、完璧な術式を使える三那人への妬み嫉みからだ。

「もう慣れたし…大丈夫だよ」

護衛の目を搔い潜り、こう何度も同じことをされていては慣れてしまう。

三那人は両親を安心させるように笑ったが、我が子を何度も害される気持ちはそんなものでは晴らせるわけもない。

母親は目に涙を溜め、三那人を抱きしめた。

「ごめんね…もっと護衛が必要ね…」

「あ、いや…」

三那人は困っていた。

そう護衛が多くても窮屈だ。

そもそもここまで何度も同じ手にかかっているようでは、護衛のほうを疑ったほうがいいのではないのかと思っていたが、口には出さず母親の背中を撫でた。

母親の背中越しに見える護衛の目には、感情がこもっていなかった。

＿＿＿

(俺のことを愛してくれてるのは分かるんだけど…頭がお花畑なんだよね)

感情豊かな母も無口な父も、三那人のことを愛している。

だが、三那人はまた冷たい部屋にいた。

(護衛を増やしても意味がない)

お花畑な両親とは違い、三那人は気付いていた。
護衛に雇った全員が買収されていることに。

(多分、俺が動かないと最終手段に出るだろう)

十三にしては頭が回るほうだと自覚していた。

この攻防も何十回と繰り返している。
そろそろ腕を切り落とすだけでは無駄だと分かるだろう。

(ほら、その証拠に)

開かれた扉の向こうには、両親ではなく

武装した、見知った護衛達が立っていた。