【嗜好・興味：呪霊】.3 (ページ48)

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第138話　暴走ページ48

頭がくらくらして、目の前がチカチカして、脚がふらついて、攻撃するほどの力も出なくて、もう到底戦えそうにない。

うねる木の根を侍らせる血塗れの三那人が、倒れる俺に向かってくる。

その瞬間頭に衝撃が走り、生存本能に従って背を向けて逃げ出した。

トンネルを出て、道を外れても逃げる。

まるで、あれは、三那人は

(鷹！！！)

獰猛な猛禽類のような雰囲気を纏い、後ろから迫る。

捕食者と被食者。

逃げられない。

意識が無く領域展開が出来ないのが救いだなんて、そんな生ぬるいことを考えた自分を殴りたかった。

魂が言っている。

三那人に、殺される。

(三那人の意識が戻れば。
三那人が戻って来てさえくれれば。

俺を殺そうとなんてしないのに)

三那人は呪霊が大好きだから、愛している筈だから。

＿だが、違った。

三那人は呪霊を愛していて、祓わないわけじゃない。
愛しているから、祓うのだ。

ようやく巡ってきた祓う(ころす)機会に、三那人が止まるはずがない。

「…っ！？」

なにかにぶつかった。
それは“帳”だった。

呪霊を閉じ込める術がかけられている。

三那人がここに来たときに下ろしたものだ。

行く手を阻まれ、もう逃げられない。
勢いよく振り向き、“帳”を背に、徐々に迫る三那人を見つめるしか出来ない。

「…はぁっ…はぁ」

＿＿「…なにをしているんだか」

そのとき、“帳”に誰かが侵入してきた。

「暴走してるのか？」

「夏油！！！」

既に意識は朦朧としていて、今にも落ちそうだった。

三那人は今もこちらに向かってきている。

「私がやるよ」

「夏油、だめだ、三那人は」

夏油はおそらく、なんの躊躇もせず三那人を殺すだろう。

(それは、嫌だ)

こうなっても尚、三那人を仲間だと思っている。

だがもう意識がもたない。
視界が揺らぐ。

その間ほんの数秒。

視界の暗転と三那人の攻撃がほぼ同時に訪れた。